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2022.11.13 08:28

月に1度だけ開く書店 生きづらさに寄り添って 「フランクに書店」店主の中上さん―ちいきのおと(96)北本町1丁目(高知市)

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テーブルにさまざまな本を並べ、棚作りをする中上曜子さん(高知市北本町1丁目のフランクに書店)

テーブルにさまざまな本を並べ、棚作りをする中上曜子さん(高知市北本町1丁目のフランクに書店)

 高知市北本町1丁目の街角に、月に1日だけ開く書店がある。フェミニズムやジェンダーなどを中心に500冊ほどが並び、性別にまつわる生きづらさを感じる人に本を介して寄り添う場となっている。その名は「フランクに書店」―。 

 ある日曜の朝。店主の中上曜子さん(43)が店のテーブルの棚を動かしては首をかしげ、本を運んでは「うーん、どうしよう」と悩んでいた。実はここ、火―土曜の夜は居酒屋、水木曜の昼はカレー専門の店。月に1度、「開けられそうな日曜」の午前11時~午後5時だけ、テーブルの上にも本を並べている。

 この日は、男性中心の社会で道を切り開いた女性の伝記や、社会の男女格差を伝える人文書などがずらり。訪れた人が「他の書店にない本を見つけた」「セレクトが面白い」と次々にページをめくる。

 中上さんは言う。「正直、商売にはなってない。自分が“生きる”ためにやってるんです」

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普段はおしゃれな居酒屋。ドアの横に小さな看板が出たら書店オープン

普段はおしゃれな居酒屋。ドアの横に小さな看板が出たら書店オープン

 32歳で結婚。娘4人の子育てに追われ、自身に刷り込まれていた“理想の母親”像に苦しんだ。早寝早起き、清潔な環境と栄養バランスの取れた食事、おおらかで優しく―。「『こうあるべきだ』と思っても思い通りにいかなくて、自分を責めた。子どもはかわいいし、成長はうれしい。でも子育てが楽しくなかった」

 6年前に夫と現店舗で居酒屋を始めた。そんな時、女性学研究家の田嶋陽子さんの著書を手にした。「こうあるべきだ」という社会の刷り込みを、性差別だとスパッと言っていた。

 「モヤモヤが晴れた。自分が悪いんじゃない、って分かった」

 同じように悩んでいる人に「本を通じて背中を押したり、気を楽にしてもらったり」したいと、3年前、店に大きな本棚を設けたのが書店の始まり。本を少しずつ増やし、お客さん同士も中上さんを媒介につながるようになった。

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女性たちが思い思いの時間を楽しむ「スナックおんな」

女性たちが思い思いの時間を楽しむ「スナックおんな」


本やおしゃべりを通して女性たちがつながる場づくりを目指している

本やおしゃべりを通して女性たちがつながる場づくりを目指している

 月に1度の書店の営業が終わると、中央のテーブルに大きなおでん鍋をどんと置いた。「女性たちが気兼ねも圧もなくおしゃべりを楽しめる場を」と2年ほど前に始めた、不定期営業の「スナックおんな」だ。

 客は女性限定。互いに愚痴を吐き出したり、おすすめのお店を教えたり。カウンターでおでんをつつく一人がつぶやいた。

 「ちょっとしたモヤモヤ感を吐き出せるタイミングがなかなかない。こういう場所はいいですね」

 来月もまた、誰かに寄り添える本を並べて訪れる人を待っている。(報道部・森田千尋)


《ちょっとチャット》
山中樹君(9)江ノ口小3年
 スーパーやJRの駅、警察署も病院も近い。安心安全で暮らしやすいです。公園も近くにあって、友達とよく鬼ごっこをします。たまに話しかけられる近所のおじいちゃんたちもみんな優しいです。食べるのが好きやき、将来の夢は料理屋さん。料理はそんなにせんけど、時々お母さんとキュウリの浅漬けを作ります。




 北本町1丁目はJR高知駅の南西に位置する、東西430メートルほどのエリア。高知中央郵便局や高知警察署などがある。かつて一帯は江ノ口村と呼ばれていた。10月1日時点で341世帯595人。

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