2024年 05月03日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2022.10.24 08:00

【嫡出推定見直し】無戸籍の解消を急げ

SHARE

 子どもの無戸籍状態解消へ、政府は法律上の父親を決める「嫡出推定」の規定を見直す民法改正案を閣議決定した。今国会に提出する。
 この規定は本来、生まれた子どもの父親を早く確定して養育環境を整える目的だが、離婚や再婚が増加する中でこの規定がかえって足かせとなり、無戸籍となるケースがみられる。生まれた環境によって子どもが不利益を被らないよう是正を急がなければならない。
 現在の規定では、離婚した女性が別の男性との間で子どもを産んだ場合、離婚後300日以内は前夫の子、再婚から200日を過ぎた後に生まれれば現夫の子と推定する。この二つの規定が重複して当てはまるのを避けるため、女性だけに離婚後100日間の再婚禁止期間が設けられている。
 だが、規定通りの「推定」と「現実」にずれが生じる場合もある。離婚協議の長期化や、夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃げている間に別のパートナーと子をもうけたケースだ。法務省が8月時点で把握する無戸籍者793人のうち、約7割が嫡出推定を避けるために出生届を出していなかった。氷山の一角に違いない。
 今回の見直しでは、離婚後300日以内の出産は前夫の子と推定する規定は維持した上で、女性が出産時点で再婚していれば現夫の子とする「例外」を設ける。
 これで前夫、現夫のどちらにも重複して推定される事例がなくなるため、再婚禁止の規定は撤廃する。DNA型鑑定により、100%に近い形で生物学的な親子関係が明らかにできる時代である。女性だけに適用される再婚禁止の規定は、国際的にも性差別と厳しい目が向けられている。撤廃は当然といえる。
 また、嫡出推定を覆す「嫡出否認」は現在、父親にしか認められていないが、その権利を母親と子どもにも拡大する。父親の協力を得られないケースでも、子ども自身が対応できることは重要だ。
 これらの見直しで一定は無戸籍を防げるようになろう。しかし、課題は依然として残る。規定の見直しが法律上の離婚、婚姻を条件にしているからだ。DVで離婚手続きが進まなかったり、新しいパートナーと事実婚を選択したりした時は対象にならない。さらに踏み込んだ対応が求められる。
 嫡出推定に絡む問題は、2007年に自民・公明両党の有志が議員立法を検討しながら、「伝統的家族観」を重んじる保守系議員の猛反発で頓挫した経緯がある。子どもたちの不利益が放置されてきた事実を重く受け止めるべきだ。
 ほかにも民法には課題が多い。1898年の施行当時と比べ、家族の在り方は多様化しており、規定が合わなくなっているのは明らかだ。選択的夫婦別姓、事実婚やLGBTQ(性的少数者)のカップルに対応した法整備を求める声は確実に強まっている。今回の改正案を契機に、国会でより広く現状の課題を議論する必要がある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月