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2022.10.21 08:00

【被害者救済法案】迅速さも中身も重要だ

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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り、国会で被害者救済の動きが加速している。
 霊感商法や高額寄付による被害者救済と今後の被害を防ぐための法整備へ、自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党が協議会を設置。関連法案の今国会中の成立を目指すことで合意した。
 国会開会前の見通しからすれば、予定外の動きだ。ほかの法案審議など国会日程への影響は避けられないが、消費者庁の有識者検討会による救済策の提言を受け、岸田文雄首相が意欲を見せた。
 目の前の苦しんでいる被害者に、一刻も早く対応しようとする姿勢は評価できる。だが、内閣支持率が下がる中で実績を上げたい岸田首相の前のめり感も透けて見える。
 首相は、解散命令請求を視野に、教団への調査に踏み込む考えを示した。その国会答弁で、法に基づき解散命令を請求できる要件として「民法の不法行為は含まれない」との解釈を示したが、これをわずか1日で翻した。
 調査の上で極めて重要なポイントを詰め切れておらず、問題に対する甘い姿勢をさらした。この答弁修正は「柔軟な対応」ではなく、「朝令暮改」「準備不足」だ。調査が、支持率回復のためのポーズではないかと指摘されても仕方あるまい。
 救済法への対応も、実績作りを焦って実効性が伴わないようでは意味がない。迅速さも中身も重要だ。
 法案作成は、消費者庁の有識者検討会による提言がベースになる見通しだ。
 大別して、霊感商法で結んだ契約の取り消し権の対象を拡大したり行使期間を延ばしたりする消費者契約法の改正▽消費者契約法でカバーしづらい寄付要求行為を規制する法整備▽相談窓口の設置など「宗教2世」への支援―の各項目で、取り組みを具体化していく。
 実務的な課題はいくつか挙がっている。取り消し権の行使を家族に認めるかどうかでは、本人の財産権との兼ね合いが焦点になる。寄付の上限規制は、収入を明かさなければいけない弊害もある。これらへの対応が焦点になろう。
 被害者救済を巡る一連の政府、各党の対応を見渡せば、評価できる面があるのは確かだ。
 消費者庁の有識者検討会の設置、議論は迅速だった。その提言を受け首相が法案提出の考えを示し、独自の救済法案を共同提出した立民、維新の会と協議の場を設置した。
 野党側には政策立案能力を示したい、与党側には早期法案成立の思惑があるとみられるが、与野党が建設的な方向で協議会を設けるのは近年では異例ではないか。
 ただ、考えが完全に一致しているわけではない。主導権争いや党利党略が先立てば、政争の具にしているともみられよう。「被害者本位」を徹底してもらいたい。
 救済法案に隠れて、教団と政治の関係の疑惑が消えるわけでもない。解明の動きも止めてはならない。

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