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2022.09.26 08:00

【デジタル教科書】紙との効果的な併用を

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 紙とデジタル、それぞれに長短はあるだろう。どうすれば子どもたちの理解が深まるか、効果的な組み合わせを見いだしてもらいたい。
 2024年度から、デジタル教科書が小中学校の英語の授業に導入されることになった。小学5年~中学3年を対象とし、紙の教科書も併用する。25年度には算数・数学でも導入する。
 これまで実証的な扱いだったデジタル教科書の本格普及へ、文部科学省がかじを切った形だ。デジタル機器が学校現場に浸透する中、文科省の有識者会議も、24年度からの本格導入を求める報告書を昨年まとめていた。全校導入する市区町村も急増している。必然的な流れと言えるかもしれない。
 ただ、教科ごとの向き不向きや、視力への影響なども指摘される。他教科への拡大など今後の方針を判断していく上で、まずは先行教科での成果や課題をしっかり検証し、知見を積み上げていくことが重要だ。
 デジタル版は、紙の教科書と同一内容をパソコンやタブレット端末で表示する。文科省は、児童生徒に1人1台ずつ端末を配備する「GIGAスクール構想」の実践を経て、21年度から実証事業を開始。22年度は希望する全学校に英語版を無償で配布していた。
 デジタル版のメリットには、音声や動画を再生できる、図や写真を拡大できる、書き込みや消去をしやすいことなどが挙げられる。英語の発音の確認、算数・数学の図形展開などが強みを発揮できる典型例で、両科目を先行させるのはそうした側面もある。実証事業で教員からの評価も高いという。
 音声読み上げやルビ振りの機能もあり、障害のある子どもや外国人の子どもにとっても、学びのハードルが下がることが期待される。
 だが、課題も指摘されている。
 一つは、子どもたちが端末の操作や機能の多さに気を取られ、集中力が落ちることだ。そうならないような授業の工夫が求められる。学校に限らず、子どものデジタル依存に拍車をかけてもいけないだろう。
 教員の習熟度や通信環境などでばらつきも生じている。実証段階では画面のフリーズやエラーなど機器のトラブルも多数報告され、対応力が問われた。導入までは1年半となっている。地域差、学校差が出ないよう、研修などを通じて国は現場環境をしっかりと整えるべきだ。
 子どもの視力への影響も懸念される。小中学生約6万5千人へのアンケートでは「授業前よりも目が疲れた」との回答が4割超に上った。専門家は視力の低下傾向が加速するとし、対策を訴える。
 紙とデジタルの併用については、財政負担を軽減するため、デジタルへの早期一本化を求める意見もあるとされる。一方、読解力や学習内容の定着という点では、紙の方が優れているとの研究結果も複数ある。紙かデジタルかの選択は、教育効果を第一に判断するべきで、財政論が先立つことがあってはならない。

高知のニュース 社説

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