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2022.09.07 08:00

【園児の車中死】悲劇はなぜ繰り返された

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 また悲劇が繰り返された。静岡県牧之原市の認定こども園に通う園児が、通園バスの中に約5時間置き去りにされて死亡した。当日の最高気温は30度を超えており、死因は熱中症だった。
 過去にも車中に幼児が取り残され、命の危険につながった事故が頻発している。防げる事故、助かる命だったはずだ。全容解明を急ぐとともに、改めて安全対策の徹底を図らなければならない。
 今度は3歳の女児が犠牲になってしまった。静岡県警が業務上過失致死容疑を視野に調べているが、重大な結果からいって、子どもの命を預かる施設として安全管理のずさんさは否めまい。
 県警によると、通園バスは本来の運転手が休暇中で、理事長兼園長が運転。園児6人のほか、派遣職員も乗っていた。園側は「園児を降ろす際に車内を十分に確認しなかった」と説明しているという。
 バスは登園後、施錠して敷地外の屋外駐車場に止めていた。車内から助けを求めても職員が気付けなかった可能性がある。送迎に慣れた担当者が不在なら、なおさら車内の点検や園内での出欠確認に注意を払うべきだったろう。
 だが、女児は帰宅する時間になるまで、車内に閉じ込められたままだった。何度も園児がいないことに気付く機会はあったはずだ。
 思い出されるのは昨年7月に福岡県内の保育園で発生した死亡事故である。
 この事故では当時の園長が通園バスを1人で運行していた。降車時や出欠の確認を怠る基本的ミスが連鎖し、5歳の男児が約9時間にわたって通園バス内に取り残され、熱中症で亡くなった。福岡県警の再現実験では、バス車内の温度は50度を超えたとされる。
 厚生労働省は今年4月、安全対策の見直しを徹底するよう求める通知を全国の自治体に出していた。熱中症への警戒、安全確認の重要さなど、痛ましい事故の教訓がなぜ生かされなかったのか。
 内閣府の調査では、2021年に全国の保育所や幼稚園、認定こども園で、子どもがけがなどをした事故が2347件発生している。福岡のバス置き去り事故を含め5件の死亡事例のほか、全体の8割を骨折事故が占めていた。
 重大な事故がどこでも起こり得ることを示していよう。施設ごとの課題に取り組むことはもちろん、共通する課題からも目を背けてはなるまい。
 日本の場合、欧米に比べて保育士の配置数も少ない上、離職率の高さなどから慢性的な人手不足を指摘する声が根強くある。近年は、新型コロナウイルス対策にも追われていよう。待遇の改善などに引き続き取り組む必要がある。
 幼い子どもは少し目を離した間にも予測できない行動を取りがちだ。保育現場の職員はもちろん、保護者も連携して安全の基本を徹底し、事故を予防したい。

高知のニュース 社説

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