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2022.08.31 08:29

「投票済み証明」知っちゅう? 高知県内発行4市村のみ「要望少ない」「強制懸念」 全国は6割超、啓発へ積極活用も【なるほど!こうち取材班】

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さまざまなデザインの投票済み証明書。左上から時計回りに、高知市、大阪府富田林市、箕面市、静岡県御殿場市の3種(コラージュ=松本康裕作成)

さまざまなデザインの投票済み証明書。左上から時計回りに、高知市、大阪府富田林市、箕面市、静岡県御殿場市の3種(コラージュ=松本康裕作成)

 有権者が投票を終えたことを証明する「投票済み証明書」を調べて―。高知県内の男性からそんな投稿が「なるほど! こうち取材班」(なるこ取材班)に寄せられた。7月の参議院選挙の際、最寄りの投票所でお願いしたが、もらえなかったという。証明書は、投票所を受け持つ各市区町村の選挙管理委員会が発行している。県内外の状況を取材した。
 
 投稿したのは吾川郡いの町に住む男性。選挙権を得て初めて投票する娘と、記念に証明書をもらおうと考えた。証明書の写真を交流サイト(SNS)に投稿するのが盛り上がっていたこともあり、「投票を身近なものにしてくれるものだと期待していた」と残念そうだった。

手間がかかる
 県内34市町村に問い合わせてみると、7月の参院選で発行したのは高知市、南国市、宿毛市、安芸郡芸西村の4市村で、約1割にとどまっていた。

 県内で最も早く発行を始めたのは高知市選管で2010年の参院選から。同市選管の田中俊次事務局次長は「当時の経緯は分からないが、04年に期日前投票が始まり、業務中に投票に行く人が増えた。『さぼってない』と勤務先に示すため証明書が必要になったのでは」と説明する。

 ただ、「発行枚数は片手ぐらい」とする自治体もあり、さかんに利用されているわけではないようだ。高岡郡佐川町、梼原町、四万十町は、希望があれば対応する予定だったが、ゼロだったという。

 残りの27市町村は対応していない。理由を聞くと、多くが「住民から求められない」「手間や負担がかかる」と回答した。

 そもそも発行のニーズが少なく、証明書の事務まで手をかけていないのが実態と言えそうだ。加えて、「有権者の投票行動に差し障る恐れがある」と指摘する自治体も複数あった。

 香美市選管は「1回の選挙で1、2件の要望はある」としつつ、特定の候補を応援する企業や組織が、所属する有権者に提出を求めた県外の事例を挙げ、「投票の秘密に触れたり、買収などにつながったりする恐れもあり、なかなか踏み切れない」と回答した。

 越知町選管も「(組織に投票を強制されて)個人の行動を左右しかねないのではないかという懸念がある」と慎重だった。

暑中見舞いに
 実はこの証明書に法的根拠や発行の義務はなく、記載内容にも決まりはない。それでも総務省によると、昨年の衆院選では、全国の自治体のうち6割超の1064自治体が発行したという。

 県外では、選挙啓発のツールとして証明書を積極活用する自治体も多い。

 大阪府箕面市は、19年からポストカード型を採用。今年の参院選では名所「箕面大滝」を市のキャラクターが眺める図案の暑中見舞いはがきにした。選管担当者は「家庭や地域、はがきを送った先で話題にしてもらい、選挙に関心を持ってもらえれば」と話す。

 静岡県御殿場市は今年、選挙権を得る18歳に関心を持ってもらおうと地元高校に依頼し、24種の絵柄を用意。投票率の低い若者世代にPRした。

 大阪府富田林市は、大阪芸術大学にデザインを依頼すると、SNSなどで話題となった。担当者は「以前はほとんど持ち帰る人がいなかったが、今回は『これをもらいに来た』という人が何人もいた」。約2万6千枚を発行したという。

 飲食店などで見せれば割引などが受けられる「選挙割」と呼ばれるサービスも広がっており、高知県内で取り組んだ飲食店もある。

 県中部のラーメン店4店舗は、今夏の参院選で投票済み証明書を持参した人に中華そばを無料サービス。300人以上が利用し、一部店舗では麺が足りなくなった。

 「少しでも投票に行ったり興味を持ってくれたりするきっかけにできないか」。5年ほど前から始めたという社長はこう話した。

 「飲食店の話題づくりにもなるし、他のお店でも取り組みが広がれば。選挙をイベントとして楽しんでもらえたらいい」(森田千尋)

高知のニュース 政治・選挙 なるほど!こうち取材班 2022参院選 高知/徳島

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