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2022.08.07 08:00

【概算要求基準】無秩序な膨張はだめだ

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 別枠扱いの設定で各省庁の予算要求はいつにも増して膨張しかねない。そんな思いが強まる。もちろん重要度が高い施策は行わなければならない。財源とも向き合いながら必要性の十分な検討が不可欠だ。
 2023年度予算の概算要求基準は、防衛や脱炭素などの経費を通常の要求ルールから外した。歳出が際限なく膨らむことを防ぐための制限に例外を設けたことになる。予算編成過程で検討して、年末に向け政治判断するという。
 経済財政運営の指針「骨太方針」には、「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」と明記した。その通りだろう。ただ、例外が多用されるようになると歳出に歯止めが利かなくなりかねない。
 防衛費の動向は焦点の一つとなる。防衛省は、宇宙やサイバー空間など新領域を含む「領域横断作戦能力」の強化を打ち出し、概算要求は過去最大の5・5兆円台をにらむ。新型装備など金額を明示しない「事項要求」を合わせると、6兆円規模にまで膨らむことが想定される。
 骨太方針は、防衛力を5年以内に抜本的に強化する意向を示した。首相は相当な増額を表明している。
 日本の防衛費は国内総生産(GDP)比1%程度を維持してきた。自民党は北大西洋条約機構(NATO)の国防支出目標である2%水準を求める。そうなると将来的には10兆円規模になる。
 21年度は当初予算と補正予算で6兆1千億円を超えた。安倍晋三元首相は、23年度は当初予算で6兆円程度を確保するべきだと訴えていた。近年は補正予算で増額する手法で規模を拡大している。
 年末には「国家安全保障戦略」などが改定予定で、当面の必要な予算を見積もる「中期防衛力整備計画」も見直される。それと並行して当面の必要な予算を見積もることになるが、総額が独り歩きすれば財政面から後年の判断を制約しかねない。費用に見合う効果が期待できるように丁寧な積み上げが必要だ。
 首相は歳出を大胆に重点化し、めりはりの利いた予算とする考えを示している。物価高騰や新型コロナウイルス対策、少子化・子ども政策の経費も別枠で対応する。「新しい資本主義」の関連施策には重要政策推進枠を設けた。重要施策に力点を置くのはいいが、重視すべきは実効性であることを忘れてはならない。
 財政の健全度を示す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、高い経済成長を実現しても25年度の黒字化は困難のようだと試算される。自民党内の積極財政派の要求を受け入れるだけでは財政再建は遠のいてしまう。
 社会保障費は高齢化に伴い、23年度は5600億円の自然増が見込まれる。子ども関連予算は欧州主要国に比べ低水準にとどまり、防衛費や脱炭素は中長期での取り組みが欠かせない。歳入の4割を国債に頼る中、恒常的な財源をいかに確保し、国民負担をどのように描くのか、首相は説明する必要がある。

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