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2022.07.19 08:40

93歳、再び犯罪被害者救う  岡村弁護士(高知県宿毛市出身) 新全国組織設立「経済支援やりとげたい」

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「被害者の経済支援を抜本的に変えたい」と話す岡村勲さん(東京都内)

「被害者の経済支援を抜本的に変えたい」と話す岡村勲さん(東京都内)

 犯罪被害に遭い、心身に傷を負った人を救うため、93歳が再び立ち上がった。宿毛市出身の弁護士、岡村勲さんが3月に「新全国犯罪被害者の会(新あすの会)」を設立し、代表幹事として活動をリードしている。犯罪被害者の権利確立に大きな役割を果たした「あすの会」の解散から4年。被害者への経済支援は一向に進んでいないとし、「あと2、3年は生きられる。その間に道筋を付けたい」と話す。

 岡村さんは中村高を卒業後、一橋大大学院を経て弁護士に。日航ジャンボ機墜落事故の日航側の弁護人や、高知学芸高上海列車事故の補償問題顧問団長を務め、日弁連副会長なども歴任した。

 仕事にまい進していた岡村さんに1997年10月、「天地がひっくり返るような出来事」が起きる。山一証券の顧客が顧問弁護士をしていた岡村さんを逆恨みし、自宅で妻の真苗さんを殺害した。

 目の当たりにしたのは犯罪被害者の扱いだった。「葬式が終わらないうちに警察に呼び出され、裁判の日も知らされず、起訴状や判決文ももらえない。いいようにこき使われ、蚊帳の外に置かれた」

 がくぜんとした岡村さんは、「自分が受けた苦しみをこれからの被害者に受けさせたくない」と、2000年に「全国犯罪被害者の会(あすの会)」を立ち上げた。

 代表幹事として署名活動で世論に訴え、弁護士として制度づくりにも積極参加。犯罪被害者基本法の制定や、凶悪犯罪の公訴時効撤廃、刑事裁判の被害者参加制度の導入へとつなげた。

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 「司法を変えるため裁判所、検察庁、法務省を敵に回した。くたくたになり、疲れ果てた」

 あすの会は18年に解散した。再び立ち上がったのは、被害者への経済的支援が進んでいないからだった。

 犯罪被害者には国から給付金が支給されるが、金額は収入や年齢によって決まる。無職や学生だと、死亡しても最低の320万円になることもある。

 警察庁によると、21年度の支給総額は10億887万円で、遺族への平均給付額は664万円。新あすの会によると、被害者への支給総額は米国やフランス、ドイツは500億円近くあり、大きな差があるという。

 一方、刑務所を管轄する法務省矯正局の22年度予算は2369億円で、仮釈放後の保護観察などを担う同省保護局は274億円。岡村さんは「加害者には2643億円、被害者には10億円。これが日本の現状です」と語気を強める。

 「交通事故で亡くなった場合でも、自動車損害賠償責任保険と任意保険で8千万円ぐらいにはなる。給付金もまずは200億円ぐらいに増やすべきだ」

 あすの会の活動によって、犯罪被害者が民事裁判を起こさなくても、被告の刑事裁判の中で損害賠償請求ができるようになった。しかし、受刑者には支払い能力がない場合も多い。

 新あすの会は、国が賠償金を立て替える仕組みの導入や、被害者を継続的に支援する「犯罪被害者庁」の設立を求めている。

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 「いつ、誰が犯罪被害者になるか分からない。社会全体で支える仕組みをつくるべきです」。熱のこもる言葉の端々に、幡多のイントネーションが残る。「抜けないんですよ」と笑う。会話の途中で時折「ふぅーっ」と深呼吸する。

 「もともと体も弱いし、疲れやすくなった。本当は100歳まで生きて(家族の介護や世話をする)『ヤングケアラー』の支援もやりたいけど、余命いくばくもない。だから、経済的支援はどうしてもやり遂げたい」

 ここまで岡村さんを突き動かすのは妻、真苗さんへの思いという。「家内は私の身代わりで殺された。もし向こうで会えたら報告したい。本当に申し訳ないことをしたけど、お前のことがなければ日本は変わらなかった。俺は日本を変えたよ。勘弁してくれな、と」(浜崎達朗)

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