2022.06.28 12:21
キャラでつながる、売れる バズる公務員・守時さんVSとんがる工務店・西村さん 高知イノベーションベース定例会
バズる公務員を経て須崎市で地域商社を立ち上げた守時健さん(写真はいずれも高知市の三翠園、山下正晃撮影)
「バズる公務員」こと守時社長は2012年に須崎市の市職員に採用された。同市で開かれていた「新子まつり」を訪れた際に、酔っ払った女性が舞台に乱入する光景を目の当たりにして「なんて自由なんだろう。ここは大学生の続きができる町だ」と思い、須崎市の職員になったという。
しかし楠瀬耕作市長から「頑張れよ」と声を掛けられ、「頑張らないといけないのかな」と方針転換。入庁3カ月後に「しんじょう君プロジェクト」を提案する。
「まずは情報発信だと思い、昔から得意だったツイッターを始めました。12万人のフォロワーに無料で情報が届くようになった。そこではPRしないのが戦略なんです。須崎を宣伝しない。しんじょう君の振る舞いに笑ってくれればいいんです。でもPRしない代わりに、ファンをとても大事にしました」
そうやってファンを広げながら、須崎市のふるさと納税事業を手掛けた。当初は200万円ほどだった売り上げが、6億、10億と増えていき、20年度は21億円を超えるまでになった。須崎市役所を退職してからは地域商社を起業。コロナ禍で「余りまくっていた」同市内の養殖カンパチの苦境をツイートするなどアピールし、約9千万円の売り上げを記録した。
「生産者は生産のプロであって、それを売るための地域商社が必要なんです」
一方の西村社長は宮大工を辞めて「全財産35円から年商30億円」の住宅メーカーに至るまでのストーリーを話した。守時社長が「しんじょう君」を分身キャラクターにしたのとは違って、自分自身をキャラクター化した。
とんがった髪型で工務店を起業した西村龍雄さん
そしてテレビやラジオなど、さまざまなメディアにも出演して、自らのキャラをアピールして知名度を高めていった。目指したのは「顔の見える」工務店。住宅建築の原価や経費を徹底的に見直し、職人たちの技能を高めるための育成を図っていった。やがて県内で大手住宅メーカーを上回る施工数を達成する。
「地場の工務店でもやり方次第で、大手住宅メーカーに勝てた。こういうことは県内のあらゆる業種でできることじゃないでしょうか。高知イノベーションベースでも、そういう意識をみんなが持ってやれたら嬉しい」
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KOIBは、東京証券取引所の最上位「プライム」に上場している不動産業「プロパティエージェント」(東京)の中西聖社長(高知市出身)らが中心となり今年3月に発足。県内IT企業などの創業者らの支援によって「次代を担う起業家」を育てることを目指している。
約40人が参加した高知イノベーションベースの定例会