2022.06.21 08:40
防災植物食べてみん? 身近に自生 調理いろいろ 避難所での栄養補給にも―高知地震新聞
小道からぷちぷちと植物を採集していく斉藤香織さん。食べられる草花はたくさん自生している(写真はいずれも四万十市津蔵渕)
■庭先や道端に
「これはシロツメクサ。生でもいいけど、炒めたり湯がいたりして、火を通すと食べやすい」
「このムラサキの花はカタバミ。茎や葉は酸っぱいから薬味で使うといい」
「ハート形の葉っぱはカキドオシ。シソとバジルを合わせたような香りで、ジェノベーゼソースがいいかも」
5月中旬、四万十市津蔵渕の周辺を、協会事務局長の斉藤香織さん(48)と歩いた。国道のそばで、オオバコやヨモギ、ミツバなどが葉を広げている。
斉藤さんはそれらを指さし「全部、食べられますよ」。「はさみは使わず、手でちぎるのがポイント。ぷちっと採れる所は軟らかくっておいしい」
そう言いつつ、次々に味見を始めた。
■自然を知る
協会は、植物生態学を研究してきた元教員の故・沢良木庄一さんが2015年に設立した。
沢良木さんはいずれ起きる南海トラフ地震を前に、「防災の第一歩は身の回りの自然環境を知ること。災害で食料難になった時、食べられる植物がたくさんあることを伝えたい」と話していた。
斉藤さんはこの思いに賛同した一人。11年の東日本大震災の際は東京で暮らしていて、スーパーやコンビニから商品が消え、買い占め騒動も目の当たりにした。
「災害が起きると、都会はお金を持っていても物が買えない。でも、高知には豊かな自然に植物がある。これを伝えるべきだと思って」
協会は「防災植物」を商標登録し、「災害が発生して食料供給が断たれた時、山野に自生する中から安全簡易に調理できて食料として利用できる植物」と定義。子ども教室などを通じて、自然に触れつつ有毒植物の見分け方や調理方法を教えている。
■「お守り」
防災植物サラダの調理。食感を足すスナック菓子を砕き、ミツバやシロツメクサと混ぜる
斉藤さんは高知大学土佐フードビジネスクリエーター人材創出事業を受講し、シロツメクサやオオバコ、スギナなど代表的な12種の栄養分析を実施。
その結果、全てにニラやホウレンソウを上回るカルシウムが、さらにカラスノエンドウやカキドオシはビタミンCを豊富に含むことが分かった。「避難所ではビタミンやミネラルが不足する。野菜の代用としても使えると確信した」
地震発生後は調理器具の不足も想定されるため、火を使わずポリ袋や少ない水で調理できる方法を提案。植物は手でちぎってポリ袋に入れ、備蓄の缶詰やスナック菓子を加えて振るだけでできるメニューを示している。
備蓄品の缶詰をサラダに加えてもよい
協会は今年2月、日頃から防災植物に親しんでもらおうと、自宅で調理できるレシピを冊子にまとめて発行。オオバコのスープやツユクサの卵とじ、ヨモギのホットケーキなど食卓を彩る品々を紹介している。
「食べられる植物を知っていると、災害時に気持ちのゆとりもできる。防災植物はお守りみたいなもの」と斉藤さん。楽しく、おいしく防災を考えるきっかけに、一品試してみませんか?(山崎彩加)
《おぼえがき》おいしく学ぼう
斉藤香織さんと四万十市を歩いていると、小学生だった頃の記憶がよみがえってきた。帰り道に花の蜜を吸ったり、実を食べたり。遊びを通して、身近な食べられる植物を覚えていったように思う。
そんな機会は次第になくなったけれど、あらためて道端に目を向けると、シロツメクサやカラスノエンドウがあちこちに。協会は防災植物の案内役も育成している。個人で実践するにはハードルが高い場合、詳しい人を招いて地域ぐるみで学んでもいい。
防災訓練に合わせ、避難所そばの植物観察会や調理教室を開くのも一つ。訓練のマンネリ化などが言われる中、新たな参加者を呼び込むきっかけになるし、料理を通して家庭の備蓄品を見直すことにもつながりそう。さらに、食育や環境、地域学習とのコラボへと可能性は広がる。植物を核に、楽しく防災の種をまいていきたい。(山崎彩加)
防災植物 簡単レシピ
ポリ袋サラダ
生春巻き
シロツメクサの天ぷら
ヨモギのホットケーキ
ミツバごはん
有毒植物に注意 最悪死亡も