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2022.04.04 08:00

【生理の貧困】タブー視やめ継続支援を

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 経済的理由などで生理用品の購入や入手に苦労した経験がある女性が8・1%に上ることが厚生労働省の初調査で分かった。20代以下では12%を超え、若年層でより深刻な実態が浮かび上がる。
 「生理の貧困」は新型コロナウイルス禍で顕在化した格好だが、以前から水面下で多くの女性が悩んできたに違いない。賃金の男女格差といった社会のひずみが表れた問題でもあろう。生理用品などの継続的な支援はもちろん、根本的な格差是正に取り組む必要がある。
 調査はことしの2月上旬、インターネットで18~49歳の女性3千人を対象に、コロナ禍以降の状況を尋ねた。苦労した経験があると答えたのは10代が12・9%で、20代も12・7%だった。世帯収入が300万円未満の割合が高かった。
 入手できなかった際には、交換の頻度を減らしたり、トイレットペーパーで代用したという。健康面への懸念に加え、学業や仕事にも支障を来しかねないだろう。
 生理用品だけでなく、体の負担を減らす痛み止めの薬や低用量ピルの費用も大きい。生活必需品でありながら、入手に窮する苦悩は個人の尊厳をも傷つける恐れがある。
 コロナ禍で問題が表面化したのは経済活動の停滞により、特に非正規で働く女性の割合が高いサービス業などがダメージを受けたからだ。解雇や雇い止めなどに遭う人が増えて問題が質、量ともに深刻化したとみてよい。
 県内でも昨秋から、市町村役場や福祉事務所、学校などで生理用品が無料配布されている。ただ、コロナ禍に伴う一過性の現象、個人の貧困と問題を矮小(わいしょう)化すれば全体像を見誤る恐れがある。
 平均賃金の男女格差など社会構造が大きく関わっているのは間違いない。女性の採用や昇進機会の拡大を図る女性活躍推進法の全面施行から6年になるものの、是正は思うように進まなかった。
 男性の平均賃金を100とすると、女性は2015年の72・2から20年の74・3とほぼ横ばいだった。54・4%の女性が非正規で働いているためで、雇用情勢の悪化がより強く影響したことは見過ごせない。
 日本では生理をタブー視する風潮も否めないが、問題の顕在化や社会的な対応の遅れには、別の男女格差も関係していたのではないか。政界の女性の少なさだ。経済格差や貧困問題は長年、政治的課題でありながら、政治は女性への影響に関して想像力を欠いた。
 女性の政界進出は、先進国でも最低水準にある。昨年10月末の衆院選で、女性当選者の割合は前回17年の10・1%から9・7%に下がった。この状況では女性の視点が求められる発想は難しい。
 日本は、男女格差の国際的な指標「ジェンダー・ギャップ指数」で156カ国中120位と低迷する。生理の貧困はそうした現状の表れといってよい。社会の在り方を見つめ直し着実に改善させなければならない。

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