2022.03.06 08:35
伝説「おかねさん」知って 江戸時代実在か、数々の武勇伝 宗呂(土佐清水市)―ちいきのおと(61)
おかねさんグッズをPRする尾崎富貴さん=左から2人目=ら宗呂の女性たち(土佐清水市下川口の集楽活動センター下川口家直販所)
キャラ絵入りグッズ続々
土佐清水市宗呂周辺で、江戸時代に実在したとされる女性「岩井のおかねさん」の逸話が語り継がれている。桁外れの力持ちで、猟の腕前は名人級。数々の武勇伝で今なお親しまれるおかねさんを広く知ってもらおうと、地元の女性らがキャラクター化したイラスト入りグッズを製作し、PRに力を入れている。
地元の伝承や昔話に「岩井のおかね」「岩井のお兼」「阿兼」として登場するおかねさん。市史などの文献によると、生まれは同市横道で、時の領主から猟師として宗呂の奥を流れる岩井谷川の周辺へと派遣された。その地で結婚し、男児をもうけたとされる。
「色白、美人で、背はうそばあ高かったと」と話すのは、おかねさんの話を聞いて育ったという宗呂出身の尾崎富貴さん(63)。実家近くの納屋におかねさんが使っていたという「兼」の焼き印が入ったてんびん棒があり、「中学生の時に担いだら(てんびんを)引きずった」ことから「180センチ以上はあったのでは」と推測する。
武士と狭い道ですれ違う際、引いていた馬を抱え上げて道を空けたという創作めいた伝承もあるが、尾崎さんは「ほんまの話らしい」。昔話では、宗呂川に架かる出合橋が現場とされている。
女相撲は横綱。正体を隠して大会に現れ、自分の強さを自慢する息子を投げ飛ばしておきゅうを据えた。猟で化け猫を仕留めたなどなど、逸話には事欠かない。
お金がたまりますように…。験を担いだ財布。5800円(税込み)で販売中
そんなおかねさんが今、脚光を浴びている。仕掛け人は、尾崎さんら宗呂の女性陣5人。「面白い話やけん広めたい」と4年ほど前、「おかねさんプロジェクト」を立ち上げてPRに乗り出した。
おかねさんのイラストを尾崎さんが描き、Tシャツやバッグ、エプロンなどにプリント。隣町にある集楽活動センター下川口家の直販所で売ると、観光客らも「何のキャラクター?」と興味を示し始めた。
イラストの焼き印が入った蒸しパン
この他にも、財布の新柄や絵本、縫いぐるみなど、新商品のアイデアは尽きない。尾崎さんらは「みそも造らないかん、畑もせないかん。ああ、鼻血が出るばあ忙しい」。エネルギッシュな女性もまた、宗呂の伝統なのかもしれない。(清水支局・山崎彩加)
《自慢のイッピン》
海と山の恵み表現 安井さんの山野草盆栽
山野草の盆栽は数あれど、安井位光(のりみつ)さん(73)が手掛ける一品はひと味違う。土の代わりに土台としている石のようなものは、海岸で拾い集めたというサンゴだ。
始めたのは10年ほど前という安井さん。空き家を利用した“工房”で、コケやキシツツジなどをバランスよく配置し、海と山の恵みが豊かな土佐清水ならではの盆栽に仕上げている。「センスがないけんねえ」と謙遜しつつも、「いろいろな山野草をミックスして、みばのえいのを作りたい」。
多くは高さ30~40センチの作品で、市のふるさと納税返礼品にも採用されている。「焼き物の水鉢の真ん中にぽんっと置いたら映えますよ」とのことだ。
問い合わせは安井さん(0880・86・0602)へ。
《ナイショのメイショ》
エノキにょきにょき
にょきにょきにょきにょき。四方八方に枝を伸ばしているのはエノキの大木。推定樹齢160年以上で、昔から子どもたちの遊び場として親しまれてきた。
宗呂上にある市の指定文化財。2002年の指定時は樹高11メートル、幹回り4・7メートルだった。1907年生まれの老人が、子どもの頃に登って遊んでいたと話したとの記録も残っている。宗呂上の尾崎寿(ひさし)区長(65)も小さい時に遊んだ一人。夏には赤い実がなり、それを食べた。木登りした後は、近くを流れる宗呂川の淵(ふち)で泳ぐのが、子どもたちの定番だった。
1920年と2001年に地区を襲った水害にも耐えた巨木。のどかな集落を、今も静かに見守り続けている。
内原希歩さん(10)下川口小4年
下川口小には、宗呂周辺から8人がバスで通っています。夏は宗呂川で、石ぐろ漁をしてウナギを捕まえるのが楽しいです。去年は学校のみんなで7匹捕まえたよ。秋はコスモス祭りもあるよ。近所の人が「おはよう」って声を掛けてくれて優しいので、宗呂は安心しておれる場所です。