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2022.02.15 08:37

揺れない津波に避難ためらう!?トンガ沖噴火で港に向かう住民、日向灘地震は逃げた人も―高知地震新聞

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未明の津波で転覆した漁船。無残な姿に漁師らのため息が漏れた(1月16日午前8時20分ごろ、室戸市佐喜浜町)

未明の津波で転覆した漁船。無残な姿に漁師らのため息が漏れた(1月16日午前8時20分ごろ、室戸市佐喜浜町)

 8千キロ先のトンガ沖から火山噴火の津波が押し寄せた後、すぐ近くの日向灘から最大震度5弱の揺れが襲ってきた―。1月、本県は2週連続で夜中に災害が起きた。沿岸部では津波到達時に海に向かった人がいれば、空振りを恐れず避難した人もいる。いずれ起きる南海トラフ地震に備えて、二夜の行動と心理をたどる。

「かまわんやろ」
 トンガ津波の最大波が本県沿岸に届いたのは1月16日未明。噴火から11時間後だった。「若干の海面変動」と予測していた気象庁は午前0時すぎに一転、注意報を発令。「つなみ!にげて!」の大字幕がテレビに映し出された。

 高岡郡四万十町興津の女性(75)は、「ゴー」という音で目が覚めた。自宅のすぐ前が小室(おむろ)漁港。玄関を開けると、かすかな光が、異様な海面のうねりを照らし出し、漁船がぶつかる音が響いていた。

 渡船業を営む弟に電話で知らせ、「高台へ逃げた方がええろうか?」。弟は「揺れたわけでもない。かまわんやろ」。女性は午前4時ごろまで港の様子を観察した。

 「海へ近寄るなという放送は流れたよ。でも、何人も水辺におったし」

津波到来の中、漁港の様子を見に来た人たち。「危機感が足りなかった」と振り返る声も(1月16日午前0時40分ごろ、室戸市佐喜浜町=読者提供の動画から)

津波到来の中、漁港の様子を見に来た人たち。「危機感が足りなかった」と振り返る声も(1月16日午前0時40分ごろ、室戸市佐喜浜町=読者提供の動画から)

 同じころ、近くの消防団員、伴ノ内珠喜さん(52)も小室漁港に駆け付けた。船が混ぜ返される湾内の様子に「こっりゃあ、ここにおられんかも…」。

 もし波高が増せば、消防車のサイレンを鳴らして避難を促すつもりだった。「町の判断を待っていたら遅い。災害では現場の判断が命を分ける」

 幸い、波は収まっていった。4隻が転覆などの被害を受けた。

 この夜、室戸市でも0・8メートルの津波が観測され、佐喜浜漁港で8隻に被害が出た。動画が撮影されており、湾内の激しい流れと、漂流する漁船を見守る住民の姿が映っている。

 撮影した男性(31)が振り返る。「船がギシギシいう音を聞き、居ても立ってもいられなかった。冷静に考えれば、逃げるべきだったかもしれない」

 所有する船が転覆したベテラン漁師(82)も港にいた。「津波は地震の後というイメージで、周りにも人が出ていて気が緩んだ。大きな波が来てたら、流されただろう」

割れた判断
 この夜、沿岸市町村の判断は割れた。

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