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2022.02.13 08:00

【入国禁止措置】効果と弊害を見極めよ

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 新型コロナウイルスの変異株オミクロン株の水際対策で、外国人の新規入国禁止措置をとる政府に対し、国内外で撤廃を求める声が高まっている。
 経済や学術などのグローバルな活動は、コロナ禍であっても止まることはない。「鎖国」は長引くほど多方面に弊害を及ぼしかねない。
 日本の水際対策は世界的にも厳しい水準で、政府は対策の骨格を2月末まで維持する方針だ。岸田文雄首相は緩和の方向性を示したが、柔軟で迅速な対応が求められる。
 政府は2020年12月、全ての外国人について新規入国を一時停止した。ビジネス関係者や留学生らの入国制限は昨年11月8日にいったん緩和したものの、欧州などでオミクロン株が急拡大。同月末には再び新規入国を禁止した。
 現在、入国できるのは在留資格を持つ人の再入国など「特段の事情」がある場合などに限られる。
 オミクロン株の特徴がはっきりしなかった段階で、網を大きく広げた岸田政権の対応はそれなりの効果を上げたと言えよう。結果的に在日米軍基地から周辺地域へ「染み出す」形で感染が広がったとはいえ、一定の時間稼ぎにはなった。
 しかし、状況は変わった。流入が危惧されたオミクロン株は既に国内で猛威を振るい、各地で「炎上」している。海外からの「火種」に神経をとがらせる段階はもう過ぎているのではないか。
 もちろん入国時の検査や待機期間などは重要だが、医療体制が危機的な状況を迎えた地域もある中では、国内の「鎮火」をより重視すべきだろう。
 コロナ禍に伴う外国人の新規入国禁止は長期に及び、その影響は着実に広がっている。
 経団連の十倉雅和会長は記者会見で現状を「鎖国政策」と表現した上で、政府に入国禁止措置の撤廃を要請。「ビジネスは国内だけで成り立っているわけではない」と危機感をあらわにした。
 海外との往来が途絶えて人手不足感が強まるほか、技術協力や企業の合併・買収(M&A)交渉などにも支障を来しているという。
 こうした状況は、日本で事業を展開する海外企業も同じで、撤廃を求める声が広がる。日本政府の内向き姿勢が長期化すれば「政治リスク」と捉えられ、投資先として優先度が低下する恐れも否めまい。
 学術分野では、長期的な影響への懸念もある。学生が研究対象や留学先を入国できない日本から韓国、欧州などに変更する動きが顕在化しているという。将来の親日家や知日派が減れば、外交や経済活動などの損失につながりかねない。
 海外ではコロナ対策と経済活動の両立を目指し、検査やワクチン接種を条件にビジネス客や観光客の入国規制を緩和する国が増えている。規制は可能な限り短い方がよい。「期間ありき」ではなく、科学的な視点で効果と弊害を見極めた対応が求められる。

高知のニュース 社説

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