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2022.02.10 08:00

【若者の自立支援】困窮と孤立に陥らぬよう

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 厚生労働省は、親元で暮らせず児童養護施設や里親家庭で育つ若者の自立支援に関して、原則18歳(最長22歳)までとしている年齢制限を撤廃する。
 自立の準備が不十分でも、施設などから出ていかざるを得ない「18歳の壁」が問題になってきた。親らにも頼れず、困窮や孤立に陥りやすいとされる。若者が将来の展望を描けるよう、支援する仕組みを構築する必要がある。
 厚労省の社会保障審議会専門委員会が、児童福祉法改正に向けた報告書で示した。年齢制限をなくすことで、施設や自治体が「自立できる」と判断するまで本人の支援を続けることが可能になる。
 親の死亡や困窮、虐待などの理由から児童養護施設に入所している子どもは約2万5千人いる。大半が高校卒業を迎えると退所している。
 厚労省は昨年、施設や里親家庭を離れた若者を対象にした初の実態調査の結果を公表。その厳しい暮らしぶりが浮き彫りになった。
 3人に1人が生活費や学費の工面に悩んでいた。家計は「収入より支出が多い」が2割を超えた。過去1年間に困窮から医療機関を受診できなかった人も2割に上った。
 実態はさらに過酷ではないかとも懸念される。厚労省によると、この調査では対象者の半数近くに案内を届けることさえできなかった。施設や里親も連絡先が分からず、居場所が不明の場合も多かったためだ。
 「つながり」が途切れ、必要な助けも行き届いていない。社会に新たな貧困が生みだされている状況と言えよう。
 県外の自治体では、施設を退所した若者に地域の世話人が寄り添い、家賃も一部補助するなどアフターケアを強化している例もある。本人を孤立させず、関係機関が連携して就労や生活の相談に乗る体制をつくり、貧困を食い止めるべきだ。
 児童虐待のアフターケアの問題でもある。厚労省によると、児童養護施設で暮らす子どもの6割以上が親らから虐待を受けた経験がある。
 心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのある場合も少なくない。回復のためには適切な支援や治療を受け続ける必要がある。しかし、施設などを離れた後、それがかなわず心身の状況を悪化させることもある。心の傷に対する継続的なケアが欠かせない。
 進路の希望がかなえられる支援策も求められる。施設などで生活している子どもは教育の機会を得にくい。実態調査では、大学や短大、専門学校を卒業した人は1割強にとどまった。学力向上や資金面の後押しが急がれる。それは将来の確実な自立につながるはずだ。
 成長の過程は子ども一人一人で異なる。従来の制限はそれぞれの子どもに向き合っていたとは言えまい。ほぼ一律に18歳という区切りで社会に送り出せば、一定数は未熟なまま困難を抱えざるを得ない。当事者の意見も反映させながら、総合的な対策を進めていかなければならない。

高知のニュース 社説

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