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2021.12.23 08:00

【香港議会選】人権侵害の深刻化に懸念

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 高度の自治を約束した「一国二制度」は完全に形骸化したと言うほかない。民主主義の根幹をなす選挙制度が、民主主義を骨抜きにする道具に使われた格好だ。
 香港の立法会(議会)選挙は親中派が議席をほぼ独占した。親中派以外の当選者は1人だけだった。実質的に「愛国者」しか立候補できない新制度で行われ、結果は目に見えていたと言える。
 有権者の6割とされる民主派の民意は今後、香港の政治から排除されよう。これまで民主派の反対で成立しなかった、統制強化を図る法案の「復活」も予想される。民主派弾圧や人権侵害が一層懸念される。
 中国政府は「公平、安全、清廉潔白」と選挙を自賛した。立法会が親中派一色に染まる結果が思惑通りだったからだろう。民主派の排除へ、習近平指導部は周到に準備を進めてきた。
 2019年11月の区議会(地方議会)選挙で民主派が圧勝。勢いに乗った民主派は、当初予定された20年9月の立法会選挙で過半数獲得を目指した。習指導部は危機感を強めたのだろう。選挙を延期し、指導部主導で選挙制度を変更した。
 新制度は外見上、選挙の形を整えただけの統制強化の仕組みといってよい。定数90のうち親中派が占める選挙委員会枠、業界別の職能代表枠を除けば、有権者が直接選ぶのは20議席にすぎない。
 さらに立候補には「愛国者」の条件を満たすかどうかの審査が何重にも行われる。これでは「自治」に民意が反映される余地はない。投票率が30・2%と過去最低を記録したのも当然だろう。
 先進7カ国(G7)や欧州連合(EU)は「深刻な懸念」を表明した。中国政府は「香港が返還されて24年たつ現実を直視し、内政干渉をやめるべきだ」と反論する。
 しかし、憲法に相当する香港基本法は、1997年に英国から返還された後も、50年間は資本主義を維持し、「高度の自治」を認めると規定する。中国側が約束をほごにしたのは明白だ。
 中国化が進む香港では昨年、統制強化を目的とした香港国家安全維持法が施行された。自由や基本的人権など権利擁護に努める市民らへの不当な迫害が続く。言論統制も強まる一方だ。今回の選挙で、警察国家化がさらに加速する恐れがある。
 中国政府は絶えず、統制強化の機会を探ってきた。2003年には外国スパイの取り締まりを想定した国家安全条例の制定をもくろんだが、大規模デモで廃案に追い込まれた。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案も再び審議される可能性があろう。
 国際社会が厳しい目を向けるのは香港だけではない。台湾や東・南シナ海、新疆ウイグル自治区など安全保障や人権に関わる重大な問題ばかりだ。北京冬季五輪を控え、中国は国際社会からの批判に敏感になっているが、自国の行動が招いていることを自覚する必要がある。

高知のニュース 社説

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