2024年 05月03日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2021.11.23 08:00

【3回目接種】国の説明不足が混乱招く

SHARE

 新型コロナウイルス対策を巡る国の説明不足と方針のぶれが自治体を困惑させる。そうした事態が繰り返されてしまったようだ。全国知事会はワクチンの3回目接種の時期などがあいまいだとして、基準を示すよう緊急提言をまとめた。
 海外では2回目接種が進んだ国で感染が再拡大する事例が見られる。接種から時間が経過すると感染リスクや重症化リスクが高くなることが指摘される。このため3回目が行われることになった。
 厚生労働省のワクチン分科会は、接種時期を2回目完了からおおむね8カ月以上を基本としている。一方で、感染状況などを踏まえて自治体の判断で6カ月に短縮することも例外的にできるとした。
 しかし、間隔を短くする場合の具体的な場面は示されていない。どのような場合に例外と位置付けられるのか、前倒しの判断を任された自治体側に戸惑いが生じている。基準を明らかにするように求める知事会側の意見はもっともだ。
 3回目は12月に医療従事者から始め、来年1月から高齢者を中心とした一般に拡大する。接種券発送へ対象者を選び出す作業が必要となる。これまでの接種が登録されていないため接種券が届かないことも想定され、それへの対応も怠れない。
 そうした中で、追加接種は早い方がいいという思いが住民に広がるようなら、自治体側に変更を求める声が強まる可能性もある。それに応じようとすれば接種券の発送や打ち手確保などの予定変更をしなければならず、実務を担う自治体への負担は大きくなる。
 そもそも、前倒ししてワクチンが十分に供給されるのかも判然としない。6カ月間隔を適用する例外的状況がどういう場合かもさることながら、原則8カ月以上とする根拠も説明が足りているとは言い難い。
 感染状況を5段階に分けて評価する新指標は、病床逼迫(ひっぱく)を重視する。これに対し知事会は、新規感染者数は先行指標であり、それを含めた統一的な指針の策定を求めた。
 感染「第5波」では、入院ができずに自宅で死亡する事例も起きた。繰り返してはならない。想定される第6波へ向け、機動的な対応が取れるシステムの構築は急務だ。
 日本では2回目まで済ませた人は約75%となり、先進国ではトップ水準となった。ただ、3回目の接種率に関し、副反応への心配や飲み薬への期待感から控え気味の動きになるという見方も出ている。
 有効性や副反応などに関するきめ細かな情報発信が不可欠だ。3回目に打つワクチンの種類がそれまでと異なることによる混乱も指摘される。十分な説明で理解を進めることが基本となる。
 行動制限が緩和され、感染防止と経済活動の両立を目指す動きが強まってきた。新型コロナを巡っては、政府の後手に回る対応と説明不足が国民の施策への協力を弱めた側面がある。混乱が続くようでは同じことが繰り返される恐れがある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月