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2021.11.18 08:00

【東芝3分割】経営正常化が急がれる

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 東芝が事業ごとに会社を3分割する方針を発表した。総合電機メーカーから完全に脱却する異例の再編となる。
 生き残りを懸けて事実上の「解体」に踏み出す。企業価値の向上を強く求める海外ファンドら「物言う株主」に歩み寄った形とも指摘されている。
 長く混乱してきた経営を正常化できるのか。綱川智社長ら経営陣は統治力を取り戻し、成長に道筋を付ける戦略を示す責任がある。
 計画では、インフラとデバイスの2事業を独立させ、2社の2023年度の上場を目指す。
 インフラ事業は原子力や火力発電、ITなど、デバイス事業は電力制御に用いるパワー半導体やハードディスクドライブなどを手掛ける。
 東芝は半導体メモリー大手、キオクシアホールディングスなどの株式管理会社として存続する。
 綱川社長は経営効率化による再生を強調している。ただ、キオクシア株は売却し全額を株主還元に充てるなど、対立してきた株主への配慮がにじみ出た内容といってよい。
 分割のメリットに挙げられるのが「コングロマリットディスカウント」の解消である。多くの事業を抱える複合企業が企業価値を過小評価される状態を指す。
 世界的にも複合企業の分割が潮流になりつつある。東芝の再建が成功すれば、国内でもこうした再編が加速する可能性もある。
 一方で、複合企業ならではのグループの稼ぎを成長分野に投じるような戦略は難しくなろう。
 裾野の広い事業で培ってきた技術や人材の総合力も失われかねない。特に横断的な基礎研究の継承は、日本の科学技術分野の発展にもかかわる課題である。
 分割後に成長できなければ、株主から事業の切り売りを迫られたり、ライバルによる買収を招いたりする恐れもある。
 東芝は原子力や半導体といった重要な技術を保有しており、経済安全保障上の問題とも言える。
 近年、東芝は経営が迷走し、繰り返し企業体質も問われてきた。15年に不正会計が発覚し、医療機器と白物家電を売却。18年にはテレビや半導体メモリー、パソコンも手放した。巨額損失を計上した海外の原発事業からは撤退した。
 企業統治の不全も露呈した。昨年7月の定時株主総会で車谷暢昭前社長が経済産業省と一体となり、「物言う株主」を妨害した疑惑も発覚している。
 今回、その調査報告書も公表され、車谷前社長の主体的な関与を認定したが、法的責任は問えないと判断した。東芝の行為は「経産省に依存しすぎる姿勢」に加え、海外投資ファンドに過度な警戒心を持っていたことが背景にあると分析された。
 時代に即した企業統治が必要である。「物言う株主」と向き合い、対等な関係を構築できるかどうか。経営陣には、名門企業の「消滅」を防ぐ努力が求められる。

高知のニュース 社説

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