2021.10.31 08:00
【COP26】先進国の責任を果たせ
2019年の前回会議で、日本は温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電の継続方針などから、不名誉な「化石賞」を2回受けた。今回は厳しい批判を受け、削減目標を上積みして臨む。先進国として積極的に貢献する姿勢が求められる。
15年に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑える目標を掲げる。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は最新の予測で、異常気象に人間の活動が影響していることは「疑う余地がない」と断定した。産業革命前と比べ、世界の平均気温が1・5度上昇する時期を従来分析より10年早い30年代初頭ごろとした。
世界各地で毎年、洪水や熱波に伴う山火事などが頻発している。国際社会では現実的な危機感から、対策への機運が高まっている。
しかし、状況は予断を許さない。気温の上昇幅を1・5度に抑えるには30年の排出量を10年比で45%削減する必要があるとされるものの、条約事務局によると、各国が目標を達成した場合でも30年の排出量は16%増えるという。COP26は、国際的な対策に実効性を持たせられるかどうかの岐路となる。
日本は13年度比で「26%減」とする従来目標が消極的と批判され、菅政権が昨年10月、50年に排出量を実質ゼロにすると宣言。30年度に「46%減」とする新目標を提出した。ただし、実現は簡単ではない。
目標の裏付けとなる新たなエネルギー基本計画は、太陽光や水力など再生可能エネルギーの電源構成比を30年度に36~38%へ引き上げ、「主力電源化を徹底」するとした。
発電時に二酸化炭素が出ない原発は20~22%とする。実現には約30基の原発を稼働率8割で動かす必要があるとされるが、国民の根強い反発もあって再稼働したのは10基にとどまる。火力発電で穴埋めすれば、削減計画に狂いが生じる。
脱炭素への最大の課題はこの火力発電の扱いだ。19年度実績で75%を占める火力の構成比をエネ計画では41%に引き下げる。石炭火力も19%まで縮小させるとはいえ、国際社会からは石炭依存の姿勢に厳しい目が向けられている。理解を得るのは容易ではないだろう。
温暖化対策は国際的取り組みであるだけに、日本の役割は国内の削減にとどまらない。途上国の経済発展と温暖化対策の両立にどう貢献できるか。先に温室効果ガスを排出してきた先進国の責任が問われる。
岸田首相にとっては就任後、初めての外国訪問となる。各国首脳と個別会談の機会もあろう。温暖化対策の議論でしっかりと存在感を示すとともに、各国との信頼関係の醸成につなげたい。