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2021.07.22 08:40

梅原真さん(高知・香美市)にアジアが注目 台湾で翻訳本、「デザインの巨匠」と紹介

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1次産業と地方にこだわる仕事が共感を得ている梅原真さん(香美市土佐山田町楠目)

1次産業と地方にこだわる仕事が共感を得ている梅原真さん(香美市土佐山田町楠目)

 高知県香美市のデザイナー、梅原真さん(71)の著書2冊が今年、台湾で立て続けに翻訳、出版された。現地では「始祖級地方設計大師(先駆的ローカルデザインの巨匠)」と紹介されたほか、中国のデザイン専門雑誌でも特集が組まれるほど。独自の切り口と手法が脚光を浴びている。

 梅原さんは「漁師が釣って、漁師が焼いた」(幡多郡黒潮町の明神水産)といったコピーや、同町の砂浜美術館の「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」といったコンセプトを発案。高岡郡四万十町の「しまんと紅茶」など、全国各地でヒット商品を生み出している。

 これまで縁のなかった台湾で、著書が出版されたのは今年3月。「おいしいデ」(羽鳥書店)が「設計好味道」として出版され、6月には「ニッポンの風景をつくりなおせ」(同)が「重塑日本風景」のタイトルで書店に並んだ。

 ただ本人は、「日本のはじっこ、ローカルのローカルでやってきたのに。なぜ台湾? どうなってんのや」。翻訳化に戸惑い、首をかしげる。

 地方の個性を肯定し、産業を生み出してきた梅原さんが、アジアで注目を集める理由とは…。

台湾で出版された梅原真さんの翻訳本

台湾で出版された梅原真さんの翻訳本

地方の潜在力をデザイン
 きっかけは、梅原さんを「憧れの先生」と崇拝する31歳の留学生女性だった。

 2019年に来日、千葉大学の博士課程で学ぶ台北出身の蔡奕屏(ツァイイーピン)さん。日本の雑誌で偶然、梅原さんの存在を知ったという。

 蔡さんによると、台湾の同世代の人たちは日本や中国国民党の統治下にあった祖父母や親と違い、民主化された社会で育った初の世代。自分のアイデンティティーについての意識を強く持っている。

 ただ台湾は日本同様、経済成長に伴う都市部への人口集中、地方の人口減少が深刻な課題。政府は日本に倣い19年に「地方創生」政策を打ち出しており、若い世代は「地域や伝統を見直し、人生や生活を考えています」。

 だから、梅原さんの著書を読んだ時、「地域がどうしたら自分で考えて自立できるか。本質的なことを、ずっと前から考えてた人がいたなんて」と驚いた。台湾の人気ウェブサイトで梅原さんの仕事を紹介すると、大きな反響を呼び、今回の翻訳本につながった。

 蔡さんは今年1月にも、日本のデザイナー14人を紹介する書籍「地方設計」を台湾で出版。梅原さんを「ローカルデザインで絶対に見逃すことのできない人物」として巻頭で紹介した。書籍はマレーシアの新聞で紹介され、香港の大学からは講演の依頼も届いた。「日本のローカルが直面する課題と解決策に、アジアの国々が強い関心を持っていると感じています」

 翻訳、出版を手掛けた出版社「行人文化実験室」(台北)の周易正編集長も「台湾に新しい方向性を生み、人々の思考を深めてくれるだろう」と話した。

 中国の雑誌で特集 
 中国の雑誌でも昨年、梅原さんの特集が組まれていた。デザイン業界の関係者がよく読むとという雑誌「DESIGN360°」。表紙には梅原さんが手掛けた秋田県のポスターや黒潮町の砂浜美術館の写真が使われ、巻頭インタビューに登場した。

 同誌の編集主幹いわく、「砂浜美術館は、中国でも有名ですよ。梅原さんが関わった商品は、まずかわいい。かわいい包装と背景のストーリーがとてもよく結びついているから心を打つんです」。

 こちらも注目の背景は台湾と同じ。猛スピードで開発が進む一方、農村は廃れている。近年、農山漁村の産品を見直そうという風潮が広がっている。

 「課題は日本と同じで、よく理解できます。だからデザインを通じて産業をつくり出す彼の言葉は、非常に興味深いのです」

高知の自然が育んだ〝哲学〟 
 梅原さんは、どんな思いで本を書いていたのか。

 「自分たちの目線を変えるだけで、誇りが生まれ産業になる。それぞれの土地の力で生きていくべきだと伝えたかったから」

 注目の理由に首をひねっていた梅原さん。台湾や中国の関係者の言葉を伝えると、「今も、なんで?という気持ちが強いけど、理由を聞いてちょっと話が見えたよ。悪い気はしないね」。

 高知の山や海で熟成させてきた哲学が、国境を超えて広がっていく。(八田大輔)

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