2017.02.14 08:50
大流通を追って 消えないカツオ(1)スーパーに集う花形
産地のラベルは百花繚乱(りょうらん)。秋の各店をのぞいてみよう。
「高知」「土佐佐賀」「久礼」は地物。「鹿児島」「長崎」「三重」「三陸北部沖」は県外物の生カツオ。「太平洋(解凍)」のラベルは、静岡などから来た遠洋の冷凍カツオだ。
店頭では日々、「日本で一番カツオをよく食べる土佐の消費者たち」が見つめる。品質や産地、値段の違い一つで、完売か、半額シールを貼られるか、ここは勝負の場だ。
◆
南国市大埇乙の「サニーアクシス南国店」。午前6時ごろ、売り場の奥にある調理場に明かりがついた。
愛媛のイサキ。長崎のアジ。北海道のサケ。生も冷凍もある。ノルウェーのサーモン。韓国のメバチマグロ。アルゼンチンのエビ。国際色も豊かだ。
てきぱきと作業するのは、白い調理服に全身を包んだ男女8人。4カ所の大きなまな板で魚を切り、パックに盛り付け、機械でラップにくるみ、シールを貼って売り場へ。開店1時間前。調理場は“戦場”と化した。
「ぜいたくな国ですわ」
包丁片手に男性社員がぽつり。さばいたシイラを漬物だるのような容器に放り捨てた。身の色が白っぽく、くすんでいたためだ。
刺し身は売り場に8時間以上置かないルール。特に注意を払うのはカツオ。変色すれば時間内でも廃棄する。
◆
「それでは開店します」。午前9時ちょうどに店内放送が流れると、スタッフが「いらっしゃいませ~」と声をあげ始めた。
鮮魚が並ぶメイン通路。陳列台の端の部分、一番目立つスペースに置かれたのは、鮮やかな紅色のカツオの刺し身と、たたき。
周辺にも生のカツオが広く陣取る。
「ここで一番売りになる、ニーズのある商品をアピールします」と関泰寛店長(42)。
大葉を添えた「お造り」や「たたき」は1、2、4人前の各サイズ。家庭で刺し身にするための生カツオは、中骨の付いた半身と4分の1の節。さらにその半分があり、皮付きと皮なしを用意。ハランボやちちこ(心臓)もそろった。
カツオ1魚種でずいぶんいろんなバリエーションを用意するものだと感心する。これら多種多様のパックは、売り時をにらみながら陳列台に補充する。
1人前の刺し身パックは午前中に。大きい節は午後2時ごろから夕方までに。夕方以降の客は帰宅後の調理を省くため、切れた刺し身を買うことが多い。
◆
総務省の家計調査(2014~16年平均)で、高知市の1世帯当たりのカツオ消費量は年間4178グラムで断トツの全国1位。高知の飲食店などでは1年を通じて観光客らがカツオを求める。
一方で、漁師はここ20年以上、漁獲減を嘆く。新聞には近年「不漁」「危機」といった見出しが並ぶ。
それでも、県内の量販店には今日もカツオが並んでいる。
海上の生産者の感覚とは裏腹に、高知県民にとってカツオは、むしろ“消えない魚”ではないのか。
不漁なのに、なぜ消えないのか。消費地・高知を中心に陸のカツオを追った。