2024.05.09 05:00
【プーチン氏5期】侵攻は正当化できない
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が通算5期目に入った。憲法改正により、プーチン氏は制度上は2036年まで大統領を務めることができる。
就任演説では、22年2月に開始したウクライナ侵攻に参加する兵士らに謝意を示した。この2年余りを「われわれは困難な時期を乗り切った」と自賛し、作戦継続へ国民の結束を呼びかけた。
侵攻に対するウクライナ軍の反転攻勢は失速し、現状はロシア軍が攻勢を強めている。とはいえ、当初の早期決着の思惑は外れた。高い得票率で大統領選を圧勝したことで、長期化する軍事行動を正当化しようとする狙いがうかがえる。
欧米はウクライナ支援を続けている。これを受けて、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)への対抗姿勢を崩さない。ロシア軍は定員を大幅に増やし、核兵器を含む近代装備の充実や武器の生産強化を図る構えを見せる。
こうした動きが欧州側を刺激して、欧州の首脳による踏み込んだ発言につながっている。ウクライナへの欧米の地上部隊派遣を「排除しない」との発言や、NATOの枠内で「核共有」を受け入れる用意があると核兵器配備への言及もあった。
対ロ強硬論に対し、ロシアは戦術核で揺さぶりをかける。米国が戦術核使用を想定したミサイルを欧州などに配備しているとして、同様の措置を取ると応じている。
ロシア国防省は、戦術核兵器を意味するとみられる兵器の使用を想定した演習をする準備を始めたと発表した。ベラルーシはこれに連動して、自国に配備されたロシアの戦術核兵器の点検を行うとする。核使用も辞さない姿勢を示しての威嚇であり、極めて危険だ。
またロシア側は、ウクライナに供与されるF16戦闘機はすべて核兵器を搭載していると見なすと警告した。F16は7月にも配備の可能性がある。戦闘を激化させないよう、対話の重要性が高まっている。
プーチン氏はNATOとの交戦の可能性に言及したことがある。また、欧米と対話するかどうかは欧米の意思にかかっていると述べている。侵攻したのはロシアであることを忘れてはならない。まず戦闘を止め、対話に応じることだ。
日本や欧米各国は対ロ制裁を継続する。これに対し、ロシアは非欧米諸国などと連携した外交や経済活動で、国際的孤立を避けようとする。経済面での打撃は想定ほど強くはないようだが、国民の閉塞(へいそく)感は強まっているという。
大統領選では9割近い得票率で圧勝した。だが、侵攻に反対する野党候補が排除された選挙は公正性などが非難される。国民の言論や対立陣営への弾圧も続く。国内外からの厳しい目を自覚する必要がある。