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2024.05.07 05:00

【教員給与増額】業務削減へ抜本的改革を

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 教員確保策を議論してきた中教審の特別部会が、公立学校教員の給与引き上げ案を提示した。残業代の代わりに上乗せ支給する「教職調整額」を、現行の月額給与4%相当から10%以上に引き上げる。
 文部科学省は来年の通常国会に、公立学校教員の給与制度を定める教員給与特別措置法(給特法)の改正案を提出する方針だ。ただ、それだけで常態化する長時間労働の問題が解決されるわけではない。人員体制や業務の抜本的改革が急がれる。
 1972年施行の給特法は、公立学校教員に残業代を支払わないと規定し、教職調整額を支給すると定める。教員の仕事は、職務か自発的な活動かの線引きが難しい面があるとされるためだ。
 現行の4%は、66年度の調査で平均残業時間が月8時間程度だったことが根拠となっている。しかし、これは現在の勤務実態とかけ離れている。文科省が2022年度に行った調査では、月45時間の残業上限時間を超える教員が小学校で64・5%、中学校で77・0%に上った。
 年間の授業時間数が国の基準を上回る学校も少なくない。22年度の文科省調査によると、小学5年で基準となる1015こまを大きく超える「1086こま以上」の学校が4割近くある。
 保護者や子どもへの対応のほか、小学校英語の教科化、学習用端末の活用など、業務量も増えている。精神疾患を理由に休職した教員は過去最多の6539人で、各地で欠員が生じている。
 学校に求められる役割が増え、教員の多忙化が進む一方で残業代は支払われない。制度が「定額働かせ放題」と批判されるのはもっともだ。
 現場や教育関係者からは給特法を廃止し、残業時間に応じた賃金を支払う制度への転換を求める声が上がっていた。管理職らが残業削減に真剣に取り組むと考えたからだ。
 しかし、特別部会は現行制度を維持することにした。理由の一つに財源の制約が指摘されている。10%に引き上げた場合、公費負担は約2100億円に上るが、残業代を支払うことになれば、それ以上の財源確保が必要になるという。
 23年度の公立学校教員の採用倍率は3・4倍となり、過去最低となった。教職調整額の増額で多少は教員志望者が増えるかもしれないが、長時間労働の問題が解決しなければ、志望者数の改善にはつながらないだろう。
 特別部会は、働き方改革や学校の指導・運営体制の案も示した。働き方改革では、残業時間は「全教員が月45時間以内」を目標とし、将来的に平均20時間程度を目指すべきだとした。指導・運営体制では、授業の持ちこま数を減らすために小学校の教科担任制の拡大や、若手教員の負担軽減も提案した。
 教員が心と体に余裕を持てないままでは、子どもの教育に悪影響を及ぼしかねない。人を増やし、業務量を減らすという抜本的な対策を実行するほかない。

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