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2024.05.07 05:00

小社会 あんまりじゃないか

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 作家、檀一雄の「小説太宰治」に熱海行の逸話がある。仕事のため滞在していた熱海に檀を迎えた太宰は、派手に飲み食いする。宿代ほかを払えなくなった太宰は、檀を「人質」代わりに宿に残し、金策のため帰京した。

 ところが、待てど暮らせど帰ってこない。数日して心当たりを捜しに東京に行くと、井伏鱒二の家で将棋を指していた。檀は「何だ、君。あんまりじゃないか」と激怒する。

 太宰は弱々しくも反撃の響きを込めて言ったという。「待つ身が辛(つら)いかね。待たせる身が辛いかね」。随分勝手な言い草だが、檀は傑作「走れメロス」を挙げてこう書く。〈私達の熱海行が、少(すくな)くもその重要な心情の発端になっていはしないか〉

 岸田首相が大型連休中の外遊から帰ってきた。いや、経済成長が著しい新興・途上国との外交は大事だろう。4月の訪米では大統領専用車に乗り、楽しげな笑顔も。ただ、国内に戻れば政治とカネの問題はまだまだ「ほったらかし」と言っていい。

 裏金事件を受けた政治資金規正法の改正では、自民党案の及び腰が目立つ。連座制では適用要件を限定。カネの透明化も乗り気ではない。首相が「早期に結論」と言いだした旧・文書通信交通滞在費の改革も、長く置き去りだった背景には自民党中心の消極論がある。

 連休序盤の衆院3補選で自民党は全敗した。世間は「あんまりじゃないか」と激怒したままということはお忘れなく。

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