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2024.05.03 05:00

小社会 「正しい道」

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 新憲法が施行された1947年はその内容を紹介する本が相次いで出版されたという。その中には旧文部省作成の中学生用の教科書「あたらしい憲法のはなし」もあった。

 当時、習った方もいるだろう。世の中が数年前とはがらりと変わり、いかに新しい時代が来たかを憲法を通じて解説している。特に平和主義を強調し、9条の戦争放棄の意義を熱く語った。

 この先「日本には、陸軍も海軍も空軍もない」が「心ぼそく思うことはありません」。なぜなら「日本は正しいことを、ほかの國(くに)よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」。

 日本の道は「正しい」ので誇りを持てと言いたかったようだ。ところが、その9条はわずか3年で揺らぎ始める。朝鮮戦争が始まり、連合国軍総司令部(GHQ)は日本に警察予備隊の設置を指示した。これが後に陸上自衛隊となる。

 文部省も慌てたろう。戦後の日本研究で知られる米国の歴史学者ジョン・ダワーさんによると、教科書は50年に副読本に格下げされ、51年には「完全に使われなくなった」(著書「敗北を抱きしめて」)らしい。

 憲法はきょうで施行77年。自衛隊はいまでは多くの国民に受け入れられているが、政府は論議も不十分なまま反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費倍増まで進める。気になって仕方がない。日本の「正しい」道はこの先もゆがみ続けるのだろうか。

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