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2024.05.02 05:00

【石炭火力廃止】本気の取り組みが不可欠

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 地球温暖化を防ぐには実効性のある対策を重ねていく必要がある。目標の設定は重要だが、抜け穴を探すようでは意味がない。真剣な取り組みが求められる。
 先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は、燃焼時に二酸化炭素(CO2)の排出削減措置が施されていない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することで合意した。共同声明に廃止年限が初めて明記された。
 温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命以来の気温上昇を1・5度に抑える目標を掲げる。声明は「目標に沿った時間軸」との表現を盛り込むことで、廃止時期に弾力性を持たせた。
 日本は石炭火力への依存度が高い。昨年の札幌市での会合では、化石燃料使用の段階的廃止を加速させるとしたが、石炭火力発電を含め、年限を示した早期全廃は日本の抵抗で見送られていた。
 石炭火力継続への道を残しながらの今回の合意は、全廃へ進もうとする欧州を中心とする各国と日本との姿勢の違いが鮮明になる。日本は一段の対応を迫られている。
 国内の石炭火力発電は多くが排出削減装置が施されていない。政府はCO2が出ないアンモニアなどを燃料に混ぜる新技術が排出削減措置に当たると解釈し、将来も石炭火力を使う方針をとる。
 しかし、石炭が含まれればCO2が排出される。実用化には発電コストが高くなる課題も指摘される。技術革新はもちろん期待したいが、削減効果が限定的なものにとどまるようではだめだ。
 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の成果文書は、世界の温室効果ガス排出量を35年に19年比で60%減と大幅に減らす必要があるとする。50年までに排出実質ゼロへ、化石燃料からの脱却を20年代に加速することも訴えた。この10年は極めて重要だ。
 日本の電源構成は火力発電への依存度が7割を占め、石炭火力は3割を担う。東京電力福島第1原発事故の影響で多くの原発が停止する一方、再生可能エネルギーの割合は低いのが現状だ。
 国のエネルギー基本計画は、火力発電への依存度を低下させる姿勢を示すが、石炭火力は30年時点でも2割を見込む。石炭を維持しながら、50年に実質ゼロが達成できるのか疑問視される。
 23年の世界平均気温は産業革命前より1・48度高かったと、欧州連合の気象情報機関は推計する。国連は温室効果ガス排出量の増加から、パリ協定の目標達成の確率は14%しかなく、対策が遅れれば3度近く上昇すると推測する。状況は厳しい。
 政府は近く、エネルギー基本計画を改定する議論を本格化させ、中長期的なエネルギー政策の方向性を示す。政府は原発政策を巡り、依存度を低減するとしてきた姿勢から、脱炭素社会の実現や電力の安定供給を名目に再び推進へとかじを切っている。その是非も重要な論点だ。

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