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2024.04.30 05:00

【衆院3補選】政権不信を受け止めよ

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 「政治とカネ」問題に正面から向き合ってこなかった帰結だ。甘い対応に批判が向けられたことを真剣に受け止める必要がある。政治改革へ熱意ある取り組みを重ねなければ信頼回復は望めはしない。
 衆院3補欠選挙は自民党が全敗した。自民派閥の政治資金パーティー裏金事件後初の国政選挙で、唯一の与野党対決となった島根1区は立憲民主党元職が自民新人を破った。
 東京15区と長崎3区では自民は独自候補擁立を断念し、異例の不戦敗となった。3選挙区は元々自民の議席だった。
 いずれも政治とカネ問題が絡む。前衆院議長の細田博之氏の死去に伴う島根1区は、細田氏は裏金問題で批判の的となった清和政策研究会(現安倍派)の会長を務めていた。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との接点を巡る問題もある。東京15区は公選法違反事件を巡る辞職、長崎3区は裏金事件での辞職を受けた。
 島根は元首相の竹下登氏、細田氏らを輩出した強固な保守地盤で、衆院小選挙区導入後は全選挙区で自民の議席独占が続いてきた。自民は裏金事件の逆風下で「王国」を死守することで、党勢の回復をもくろんだ。岸田文雄首相自らが選挙区入りするなどてこ入れしてきたが、大差での敗北となった。
 自民は2021年4月の衆参3選挙で不戦敗を含めて全敗を喫し、当時の菅義偉首相の求心力低下につながった。菅氏は9月の総裁選不出馬に追い込まれる結果となった。
 岸田政権にとっても、今後の政権運営や衆院解散戦略への影響は避けられない。選挙の顔には不適格の烙印(らくいん)を押されかねず、首相がにらむ総裁再選にも関わってくる。
 岸田内閣は支持率が20%台と低迷する。裏金事件は実態解明が進まない一方で、自民は39人の処分で幕引きを図る。世論調査では、首相が処分されなかったことに納得できない人が8割に迫り、議員処分が軽いは6割を超える。視線は厳しい。
 裏金事件の再発防止を図る政治資金規正法改正への動きも鈍い。自民は一時は独自案を見送る構えを見せていた。提示した内容は議員への罰則適用要件は限定的で、使途公開などには消極的だ。首相がどこまで踏み込むのか、指導力が試される。
 立民は政治とカネ問題の批判票の受け皿になり3補選を制した。後半国会で政権追及の追い風となる。ただ、積極的な支持を得たとは言い難い。投票率はいずれも過去最低だった。野党連携への役割をいかに果たすかも今後の展開の鍵となる。
 世論調査では、次期衆院選の結果は与野党伯仲が望ましいとする人が5割に達する。政権党のおごりへの反発は強く、野党に頼り切れない心情もうかがえる。求めているのは政策論争であり政治の緊張感だろう。
 物価高騰が暮らしを圧迫する。人口減少や少子化が地域社会にのしかかるが財源の議論が深まらず、先行き不安が拭えない。政治が停滞しているわけにはいかない。

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