2024.04.28 05:00
高根の花
珍道中はエッセー漫画にも楽しげに描いている。イランの骨董(こっとう)品店では商品ではなく、なぜか店の主人が使っていた灰皿が気に入った。灰皿をふいた主人は100ドルだと胸を張る。1ドル360円の時代。ちゃんと値切っただろうか。
60年前の4月に自由化された海外旅行は相当、高価だった。ハワイ4島を巡る7泊9日の旅で料金は36万4千円。大卒初任給が約2万円だった時代で、ほぼ1年半分に当たる。右肩上がりの世相とはいえ、しばらくは「高根の花」だった。
ことしもゴールデンウイーク期間に入った。新型コロナウイルス感染症が5類に移行してから初の大型連休になる。さぞ海外旅行組も解放感たっぷりにと思いきや、円安が影を落として動きは複雑なようだ。
旅行大手JTBによると、国内を含めた旅行者数はコロナ前の9割まで回復する見込み。ただ、海外の行き先は韓国や台湾、東南アジアと近場が多いとか。食事も驚くほど高いと聞く欧米の物価高、歩みが遅れた国内の賃上げ。旅好きの日本人には厳しい時代かもしれない。
34年ぶりの円安水準が続く。いったん身近になったものが「高根の花」に戻るとすれば、やはり寂しい。