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2024.04.16 05:00

【イランが報復】負の連鎖を食い止めよ

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 報復の連鎖を断ち切らなければならない。中東情勢は緊迫の度合いを増している。偶発的な衝突が混乱を拡大しかねない。関係国の冷静な対応が求められる。
 イランはイスラエルを弾道ミサイルや自爆型無人機で大規模に攻撃した。イランがイスラエルに直接攻撃したのは初めてだ。在シリアのイラン大使館が攻撃を受けたことへの報復だと主張している。
 攻撃に対し、イスラエル軍はミサイルや無人機の99%を迎撃したとする。空軍基地が小規模な被害を受けたほか、1人が負傷した。
 イランはイスラエルをパレスチナの占領者として存在を否定してきた。イランは公館空爆を受けて、最高指導者ハメネイ師が報復を宣言していた。保守強硬派の要求も無視できなかったはずだ。
 攻撃には周辺の親イラン武装組織が加わっていたとの分析がある。イスラエルへの攻撃を強める可能性があり、戦闘が中東地域に拡大しかねない。警戒が不可欠だ。
 今後はイスラエルが反撃に踏み切るかが焦点となる。イランは対立の先鋭化を避けたいのが本音との見方がある。イラン革命防衛隊のサラミ司令官は報復を限定的な作戦と位置付け、抑制的だったとの認識を示した。ライシ大統領はイスラエルに教訓を与えたとし、無謀な振る舞いに断固対応すると声明を発表した。
 全面衝突に発展することへの危惧がうかがえる。イスラエルと直接戦火を交えれば米国の参戦を招き、体制が影響を受けかねない。米国が軍事行動を起こした場合は相応の対応をとるとする警告は、イスラエルを抑え込ませたい思惑がにじむ。
 一方、イスラエルは核開発を進めるイランを安全保障上の脅威と捉える。レバノンの民兵組織ヒズボラが越境攻撃に使う武器は、イランがシリア経由で提供しているとみる。シリアのイラン公館への直接攻撃に踏み切り、パレスチナ自治区ガザではイランが後ろ盾のイスラム組織ハマスの掃討を続けている。
 ガザでは3万3千人以上が犠牲となり、餓死者が出るほど人道危機は深刻になっている。戦闘休止と人質解放を巡る交渉は進展せず、イスラエルはガザ最南部ラファに地上侵攻する構えを崩していない。
 国連安全保障理事会は緊急会合を開いた。イスラエルは報復の権利を主張し、イランは自衛権の行使だと正当化した。ともに軟化の気配はない。グテレス国連事務総長は関係国に自制を求めた。
 米国にしても紛争拡大は避けたい思いは強い。バイデン米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、地域紛争に発展すれば壊滅的な結果をもたらすとして、イランへの反撃に反対すると伝達した。
 バイデン氏にとって、中東地域の安定は大統領再選戦略に影響する。ネタニヤフ氏に対していかに圧力を強めるかが注視される。
 被害のさらなる拡大を食い止めなければならない。国際社会は連携した取り組みを強める必要がある。

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