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2024.04.15 08:00

【経済安保新法】懸念は払拭されていない

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 公的な情報を囲い込み、扱える人も限定する秘密保護法制は、運用が恣意(しい)的になったりプライバシーを侵害したりするなどの危うさをはらむ。必要性があるとしても慎重に臨むべきだ。
 政府が国会に提出している「重要経済安保情報保護・活用法案」が衆院を通過した。2013年に成立した特定秘密保護法の延長線上にあり、機密情報の保全対象をこれまでの外交、防衛など4分野から、経済分野にも広げる。
 衆院の審議では、運用の透明化などを求める野党の要求に応じて法案は一部修正された。しかしなお曖昧な部分が多く、懸念は残ったままだ。法案は参院に移る。問題点とそれへの備えを、より掘り下げて議論する必要がある。
 法案は、先端技術や重要インフラなど、漏えいすると国の安保に支障を与える可能性がある情報を「重要経済安保情報」に指定する。国が身辺調査を行い、信頼性を認められた人のみが情報を扱う資格を持つ「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を導入する。漏えいには拘禁刑や罰金を科す。
 政府は、適性評価制度を既に運用する欧米各国と足並みをそろえることで、当局間の情報共有や民間の競争力強化を図ると訴える。米中対立など国際情勢が緊張する中、軍事、経済面の先端技術・情報を守る重要性が増しているのは確かだろう。
 ただ衆院の審議を経ても、指摘されてきた懸念は払拭されなかった。一つは、機密指定の範囲がいまだ不明確なことだ。国民の知る権利が制限されかねず、恣意的な情報隠しや企業活動の制約などにつながる可能性もある。
 政府は、情報指定や解除など具体的な運用基準は法制化後に検討するとする。国会審議で可能な限り丁寧に説明するのが筋ではないか。
 適性評価の導入にも、危うさが伴う。対象は公務員だけでなく民間企業の社員や研究者に広がり、国は本人の同意を得て、家族の国籍や犯罪歴、精神疾患、飲酒の節度、経済状況などを調べて資格を判断する。
 しかし、調査がプライバシー侵害につながらないか危惧され、適性が認められなかったり調査を拒否したりした人が不当な扱いを受けない仕組みも確立されていない。
 審議では、運用状況を国会が監視する規定がないとして野党が反発。政府は、重要情報の指定や解除、適性評価の実施状況を国会に毎年報告するなどの対応を、修正案に盛り込んだ。
 懸念に一定配慮した格好だが、この対応が恣意的な運用の歯止めに実効性を上げるかは見通せない。そもそも、特定秘密保護法にも規定されている、国会による運用状況の監視規定を最初に盛り込んでいなかった政府の姿勢に疑問が膨らむ。
 国が重要な情報を統制し、当局が国民の素性を調べて当たり前といった風潮が強まれば、社会が萎縮していく。「秘密保護」の不当な運用を防ぐ仕組みが欠かせない。

高知のニュース 社説

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