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2024.04.12 08:00

【日米首脳会談】国民への説明欠く一体化

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 日米同盟は前例のない高みに到達し、防衛・安全保障協力はかつてないほど強固になった。両国の関係を共同声明はこう位置付けるが、国民の理解や支持はどれほど高まっているだろう。説明を欠いた取り組みでは分断を招いてしまう。
 岸田文雄首相はバイデン米大統領と会談した。首相はグローバルなパートナーとして真価を発揮すべき時だと述べ、世界の課題に共に対処すると強調した。
 インド太平洋地域で中国が影響力を増している。両首脳は日米同盟の抑止力、対処力強化が急務だと確認し、自衛隊と在日米軍の連携強化に向けた指揮・統制枠組みの見直しで合意した。政府は陸海空3自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合作戦司令部」を2024年度末に発足させる考えだ。
 自衛隊と米軍は台湾有事を想定した共同作戦計画を策定するなど、一体的な運用が加速している。指揮・統制枠組みの見直しで部隊の運用性向上を見込むが、自衛隊の指揮権を米軍に委ね、米軍の武力行使と一体化する恐れが拭えない。政府はおのおの独立した指揮系統に従って行動すると説明しているが、議論は尽くされてはいない。
 岸田政権は国家安全保障戦略などを改定し、安保政策を転換した。防衛費増額の方針を掲げ、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を打ち出した。専守防衛の理念は形骸化し、日本が「盾」、米国が「矛」を担った日米同盟の変容が進む。
 会談では、防衛装備品の共同開発に向けた協議体創設を確認した。政府は防衛装備品の輸出拡大を狙う。殺傷能力が高い戦闘機の輸出に踏み切る方針だ。日米の安保協力が防衛産業分野でも強化される。
 経済分野では、投資拡大を歓迎し、人工知能(AI)や半導体、量子技術の分野での協力を促進する。また、中国の経済的威圧をにらみ、半導体など戦略物資のサプライチェーン(供給網)構築をはじめ、経済安保分野の連携で一致した。
 今訪米では、フィリピンのマルコス大統領を交えた初の日米比首脳会談が実施される。米国と英国、オーストラリアの安全保障枠組みAUKUS(オーカス)は、日本との協力検討を明らかにした。対中包囲網を強める動きが広がる。
 対立を先鋭化させないために対話の重要性が増す。共同声明では中国と意思疎通する重要性を取り上げ、共通する課題での協力にも言及している。こうした姿勢を建設的な関係へとつなげることが重要だ。粘り強い取り組みが求められる。
 支持率が低迷する首相にとって、日米の緊密さを見せることで政権浮揚を図りたい思惑が透ける。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件にまつわる処分を訪米前に行ったのも、区切りを演出したかったためとみられる。
 狙い通りにいくかは不明だが、見られているのは首相が説明責任とどう向き合うかだ。その姿勢を欠くようでは信頼は高まらない。

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