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2024.03.26 08:00

小社会 不屈のドラマ

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 柔道の山下泰裕さんといえば、ロサンゼルス五輪(1984年)の活躍が語り草である。右ふくらはぎを負傷しながらも勝ち進み、決勝も一本勝ちして金メダルを手にした。

 表彰台での痛々しい姿をよく覚えている。肉離れを起こしていたというから、普通なら試合に出られる体ではなかったろう。後に振り返っている。「最初で最後の五輪」と心に決め、臨んだ大会だったと(著書「我が道」)。

 その4年前のモスクワ五輪には日本のボイコットで出場できず、そうこうしているうちに体力的に「満月が欠け始めた」。けがだからと途中離脱するわけにはいかなかったようだ。

 山下さんは恩師から「次のチャンスがあると思うな」との教えも受けてきたという。トップ選手ともなると、一戦一戦に懸ける思いは「また次がある」と思いがちな私たちとは違うようだ。大相撲春場所で記録ずくめの初優勝を飾った尊富士もそうだったのでは。

 前日の取組で靱帯(じんたい)を損傷しながらも千秋楽に挑んだ。大相撲は年6場所あるが、110年ぶりとなる新入幕での優勝が懸かった大一番。当人はけがを押して土俵に上がる選択をする。「これを止めたら後悔しますよ」。師匠の伊勢ケ浜親方も認めたとテレビ中継で語っていた。

 どんなスポーツも歴史に残る勝負や記録の裏には必ずドラマがある。不屈の人間ドラマが。これこそ単なる勝ち負けでは語れないスポーツの奥深さだろう。

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