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2024.03.20 08:00

【17年ぶり利上げ】政策転換の混乱回避を

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 賃金と物価がそろって上昇する好循環が見通せる状況になったと判断された。17年ぶりの利上げであり、「金利のある世界」という言葉も使われている。金融政策の転換が混乱を生じさせないように、細やかな目配りが欠かせない。
 日銀は金融政策決定会合で大規模緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を決めた。長期金利を抑えるための長短金利操作は撤廃し、上場投資信託(ETF)の新規購入も終了する。
 日銀は景気を刺激するためマイナス金利政策を導入し、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に手数料を課して短期金利をマイナス0・1%としてきた。解除後は金融機関同士の短期貸し借りの金利を0~0・1%に誘導する。また、市場から国債を買い入れて0%程度に誘導し、上限を1%程度とした長期金利の誘導目標と上限は撤廃する。
 日銀は賃金上昇を伴う形で消費者物価2%上昇を持続的、安定的に達成できる見通しが立てば、政策の正常化を検討する意向を示してきた。そうした状況を確認したことで、大規模緩和策からの転換へと動き始めたことになる。
 直近の国内総生産(GDP)改定値は2四半期ぶりのプラス成長に転じた。能登半島地震の影響はあるが、企業業績は好調に推移している。ただ、物価高で内需を支える個人消費は弱い。実質賃金は低下が続く。食品を中心に値上げが相次ぎ、消費支出は前年を下回っている。
 一方、今春闘の賃上げ率は、これまでの集計では33年ぶりの高水準となっている。こうした動きを持続できるかが注目される。物価高や人手不足が続く中、賃金アップをしなければ人材確保が難しくなっている。賃上げが中小企業にも行き渡るかが鍵を握る。
 日銀は金利を抑え込むために大量の国債を購入してきた。長期金利に上昇圧力がかかり、保有量は市場に出回る国債の半分に達している。この対応は、市場で決まる金利をゆがめる副作用が指摘された。金利の上昇は国債の利払いを増やし、国債頼みの財政運営を厳しくさせる。日銀は金利の急上昇を防ぐために長期国債の買い入れは続けるが、財政規律を緩ませてはならない。
 マイナス金利の解除で変動型住宅ローンや企業の借入金利が上がり、個人消費や設備投資を抑制しかねない。植田和男総裁は、預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとはみていないとの認識を示した。当面は緩和的な政策を継続する姿勢なのは、景気を冷やすような急激な変化を避けるためだろう。
 金融緩和の規模が異例の大きさだったため、本来の姿に戻すのは簡単ではない。想定を超えた動きには機動的に対応して沈静化を図る必要がある。国債を無制限に買い入れて金利を抑える枠組みなどを残した。
 政策変更の影響を見極めながら正常化へ歩む必要がある。丁寧な情報発信を通した市場との対話がこれまで以上に重要となる。

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