2024.03.16 08:00
【参院政倫審】裏金の解明には程遠い
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院に続き参院でも政治倫理審査会が開かれた。安倍派の世耕弘成前参院幹事長ら3人が審査に臨んだ。
安倍派では長年、パーティー券販売ノルマを超えた利益を議員に還流してきた。世耕氏は、還流に関与したことはなく、報告や相談も受けていないと弁明した。
還流は安倍晋三元首相の意向を受けていったんは中止が決まったが、安倍氏の死去後に復活させている。その経緯や違法性の認識、誰が判断したのかなどは注目点だ。
世耕氏は、自身が出席した派閥幹部協議で復活が決まったことはないと主張した。衆院政倫審では協議結果について、困っている人がいるから仕方ないと継続になったとする説明と、結論は出ていないとの説明に分かれていた。証言の食い違いが改めて浮き上がる一方で、詳細は判然としないままだ。
安倍派は参院選の年に、改選を迎える議員に販売ノルマと超過分を合わせた全額を還流する独自ルールがあったとされる。世耕氏は始まった経緯は分からないとし、選挙費用には充てていないと説明した。橋本聖子元五輪相も政治活動のみに使ったと述べている。
改選議員になぜ全額還流するのか。狙いや使途に疑念が向けられるのは当然だ。丁寧な説明を重ねなければ納得が得られるはずはない。
衆院政倫審後の世論調査では、出席した安倍派と二階派の幹部5人について、説明責任を果たしていないとの見方が9割を超えた。参院政倫審も解明には程遠く、高い評価は望めそうにない。
出席した西田昌司元政調会長代理は、安倍派幹部が説明責任を果たしていないと批判した。還流が復活したことに、派閥幹部の責任は重大だとも指摘した。その思いは世論とも重なるが、解明と再発防止につなげてこそ受け入れられる。
参院政倫審は、不記載があった自民現職ら計32人を審査対象にすると議決した。残る29人に出席を促す。衆院は安倍派の会長代理を務めた下村博文氏が出席する政倫審が予定される。野党はさらに、参考人招致や証人喚問をにらむ。
岸田文雄首相は、疑念が残るなら引き続き説明責任を尽くしていかなければならないと述べた。党としての実態把握を進める意向も示している。だが、本腰を入れて指導力を発揮するかは疑わしい。
岸田内閣の支持率は過去最低を更新した。政倫審を巡っては自身の出席を打ち出して事態を動かした場面もあったが、評価されてはいない。課題となる政治資金規正法の改正に取り組む前に、全容を解明して問題点を明確にする必要がある。首相の向き合う姿勢が見られている。