2024年 04月28日(日)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2024.03.15 08:00

【進む賃上げ】中小企業を取り残さない

SHARE

 ピークを迎えた2024年春闘で大手の記録的な賃上げが続いている。労働組合の要求に対し満額回答が相次ぎ、要求を上回った企業もあった。
 歴史的な物価高が続く中、日本経済の課題といえるのが個人消費の拡大だ。賃上げが物価高に追い付かなければ財布のひもは緩まない。
 その意味で満額回答や賃金の大幅アップは歓迎すべきである。しかし問題は、国内労働者の約7割が働くとされる中小企業にもその波が広がるかどうかだ。
 商品やサービスに価格転嫁が進んだ大手は業績が急回復。最高益を上げる企業も出ている。一方で、中小は取引先の大手に対し立場が弱いこともあって、価格転嫁が思うように進んでいない。
 中小企業やその従業員も潤っていかなければ、景気の回復は底堅いものにはならないだろう。大手の姿勢が問われる。政府も、中小を後押しする必要がある。
 労組への回答状況を見ると、今春闘は自動車や電機大手などで過去最高水準の賃上げとなっている。鉄鋼大手には労組の要求額に5千円上乗せした企業もある。
 大手では昨年も満額回答が相次ぎ、平均賃上げ率は31年ぶりの高水準となった。今春はそれをさらに上回り、経団連の4%超の賃上げ目標も達成が確実視される。
 大きな理由は人材の確保だ。景気の回復基調もあって、大学生の就職活動はいま、学生優位の「売り手市場」。人材確保には賃金アップが欠かせないというわけだ。
 ただ大手の労働条件がよくなればなるほど、中小は人材を奪われる。人材不足で事業の縮小や中止を決める例さえ出ている。
 価格転嫁が進まないことに加え、人材も確保できないとなれば、中小の業績は一段と厳しくなる。それがさらに人材不足を招く悪循環に陥りかねない。
 中小も賃上げを進めてはいる。日本商工会議所の調査では、24年度に賃上げを予定する中小企業は61・3%で、前年度から3・1ポイント増えた。ところが、その過半は業績が低調なままの賃上げという。
 人材確保のため、捨て身の対応になりかねない状況だ。業界によっては、大手と中小の賃金格差が過去23年間で最大3倍に拡大したとの調査結果もある。
 こうした状況が改善されなければ、大手と中小の格差はさらに広がり、経済の地力低下につながる危険がある。中小企業が多い地方の人口流出も一段と加速するだろう。
 先ごろは、日産自動車が部品メーカーなどの下請け業者に対し、支払代金を一方的に減額する悪質な「下請けいじめ」を続けていたことも明らかになった。
 業績回復や賃上げの波から中小企業を取り残してはならない。まして大手が中小を犠牲にして業績を上げるなどあってはならない。日本経済が回復を底堅いものにできるか正念場である。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月