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2024.03.14 08:00

【次期戦闘機輸出】説明不足のまま緩和か

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 防衛装備品の輸出ルールは国の針路に関わってくる。国会で満足な議論がないままの政策転換は容認できない。国民への十分な説明と理解を得ることが基本となる。
 政府が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機に関し、自民、公明両党が第三国への輸出解禁で大筋合意する方向となった。
 戦闘機の開発には膨大な経費がかかる。共同開発することで資金が分担される。また、第三国への輸出を含め生産機数を増やせば調達価格を抑える効果が期待できる。国内防衛産業の基盤維持や輸出先との関係強化の狙いもあり、政府は輸出解禁をもくろむ。
 日本は武器輸出三原則に基づき、事実上の全面禁輸を続けてきた。しかし緩和が進む。安倍晋三内閣では輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則を閣議決定し、従来の禁輸政策の撤廃に踏み切った。岸田文雄内閣は昨年末、三原則と運用指針を改定し、輸出ルールを緩和した。
 政府は次期戦闘機を巡る3カ国協議が本格化するとして、早期の与党合意を求めている。自公はこれまでにルール緩和容認の方向で論点を整理したが、公明は殺傷能力のある武器の輸出に国民の理解は得られていないと慎重姿勢に転じていた。
 世論調査では第三国輸出について、同盟国や友好国などに限定しての容認がやや上回るものの、一切認めないとする判断と拮抗(きっこう)している。容認するにしても輸出国限定であり、紛争助長への警戒感が相当強いことがうかがえる。
 政府は、国際共同開発する防衛装備品のうち第三国輸出の解禁は次期戦闘機に限定するとの歯止め案を示す。また、三原則の運用指針改定や輸出先を決める際の閣議決定を要件とする案などが出ている。
 首相は、第三国輸出を重要な政策手段と位置付け、国益にかなうと主張する。また、厳格なプロセスをとり、平和国家の基本理念を堅持する姿勢を示すとする。ならば、国会と向き合うことを忘れてはならない。殺傷能力が高い戦闘機の適正管理は可能か、なし崩しで武器輸出の大幅拡大につながらないかなどの懸念を解消する必要がある。
 第三国輸出を巡っては、公明の山口那津男代表が共同開発を決めた際の前提ではなかったとして、重要な政策判断の変更だと首相を公然と批判する局面もあった。政策変更が唐突だと与党の一角が主張するくらいだから、国民への説明や国会での議論が不足しているのは明白だ。
 首相は説明を欠いたまま安全保障政策の転換に突き進んでいる。持たないとしてきた反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や、防衛費の増額を打ち出してきた。中国や北朝鮮の動向を受けて東アジアの安保環境は厳しくなり、防衛の在り方への関心は高まっているとはいえ、前のめりの姿勢では危うい。
 国民を置き去りにしたような状況で事態が進展するのは問題だ。議論を深める必要があり、首相の言う説明責任はこれにも当てはまる。

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