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2024.03.11 08:00

【大震災から13年】復旧・復興へ長い道のり

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 東北などを激しい揺れと巨大な津波が襲った東日本大震災から、きょうで13年となる。インフラの復旧が進んだ一方、全国では今も約3万人が避難生活を余儀なくされている。復興への道のりはなお遠い。
 今年の元日には大震災と同じ最大震度7を観測した能登半島地震が発生。いつ襲ってくるか分からない天災の恐ろしさを見せつけた。それぞれの被災地の今を見つめ、南海トラフ地震に対する備えと減災への意識付けを新たにしたい。
 大震災以降、巨大な津波が沿岸部の街や人の営みをのみ込む映像が繰り返し流れた。大震災の犠牲者約1万5900人のうち、9割が溺死。その威力と無慈悲さは強烈な印象を人々に植え付けた。ただ、溺死した人の中にも、つぶれた家で身動きが取れないまま津波にのまれた人も多かったとみられる。
 揺れたら高台へ避難―。大震災の教訓もあって能登半島地震では津波による人的被害は少なかったが、一方で揺れの脅威を再認識させられたのではないか。死者241人(2月末)のうち倒壊家屋の下敷きになった圧死は90人超。救助されるまでに体力を消耗したのだろう。低体温症・凍死も30人以上を数えた。
 まず、本震の揺れをどうしのぎ、命を永らえるか。二つの地震は重い課題を突きつける。命に直結する家屋の耐震化を着実に進める取り組みが欠かせない。
 能登半島地震から2カ月余り。発災後の混乱から、被災地は徐々に復旧・復興の段階へと移りつつある。しかし、ここからが被災者や地元自治体にとって長い道のりとなろう。東北の現状がそれを物語る。
 この13年で災害公営住宅が完成し、復興道路も開通。鉄道もバス高速輸送システムへの切り替えを含めて復旧した。ただ、インフラは整っても人口減少は加速し、地域社会の未来に影を落とす。昨年10月時点の岩手県大槌町の人口は震災前に比べ32%減少。宮城県南三陸町も34%、女川町は39%減った。
 南海トラフ地震に見舞われた場合に、本県でも懸念される現象だ。東北では被災者の生活再建の動きに災害公営住宅の整備が追いつかず、諦めた住民が被災地から流出する一因になったと指摘される。スピード感は重要だ。事前の復旧・復興計画の段階から、できるだけ迅速な対応に向けた備えが求められよう。
 地震そのものの被害に加え、福島県には東京電力福島第1原発事故の影響が色濃く残る。7市町村に帰還困難区域が設定されたままで、被災者の帰還を阻む。避難を続ける約3万人のうち、複合災害となった福島県が2万6千人余りを占める。
 廃炉作業は先行きが全く見通せない一方、昨年8月に始まった処理水の海洋放出は新たな風評被害を生み、中国の輸入停止など漁業者への逆風はなお続く。現在進行形の被害を横目に、岸田政権は「原発回帰」を推し進めている。政府内で原発事故の教訓が先行して風化が進んでいるようにみえる。

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