2024.03.11 09:00
「パンどろぼう」の大型絵本を県内小学校へ 元県教育長・大崎さんら 「読書活動の第一歩に」―EINEE高知
柴田ケイコさんの人気作「パンどろぼう」。大型絵本が4月に刊行されます
子どもたちに絵本に親しんでもらおうと、大型絵本を県内の小学校などに贈るプロジェクトを、元県教育長の大崎博澄さんらが進めています。寄贈するのは、高知市在住の絵本作家・柴田ケイコさんの人気作「パンどろぼう」。クラウドファンディングで支援を募っており、「学校での読み聞かせを、子どもたちの豊かな読書活動の第一歩にしていきたい」と呼び掛けています。
■読書から育まれるのは「生きる力」
元県教育長の大崎博澄さん。退任後は不登校や引きこもりの当事者や家族を支えています
長年の活動の中で、大崎さんは「子どもたちが生き生きと育つ環境がどんどん失われている」と感じてきました。
「少子化なのに、不登校の子どもはどんどん増えています。便利な情報機器が普及していますが、受験中心の学習で、仲間と遊んだり、自然と親しんだりする時間は減りました。子どもたちの生活は忙しく、味気ないものになっているのではないでしょうか」
「子どもたちが生き生きと育つ環境」の一つが、本との出合いです。「立派な図書室や図書館があっても、本に親しめていないのでは」。保護者が仕事で忙しく、わが子に読み聞かせをする余裕がない現状も憂いています。
読書で身につく国語力は、読む力や書く力だけでなく、「生きる力」としてとても大事だと考えています。「コミュニケーションを取る力や、物事を論理的に考える力、想像力や優しい心も国語力がベースになっていると、私は考えます」
■図書予算では手が届きにくい大型絵本
大崎さんの読書への思いが、「子どもたちに絵本に親しんでもらう機会をつくりたい」という県内の書店関係者らの思いとつながり、「高知の子どもたちへ本を届ける会」を結成。大型絵本を贈る今回のプロジェクトが始まりました。
大型絵本は大人数を前にした読み聞かせ用として作られ、「ビッグブック」とも呼ばれます。価格は通常の絵本の10倍ほどと高価。「小学校の限られた図書予算では購入をためらう場合が多い」ことから、支援が決まりました。
「パンどろぼう」は柴田ケイコさんの人気絵本で、2020年4月にKADOKAWAから刊行されました。大好きなパンをかぶり、おいしいパンを探し求める「おおどろぼう」が話題になり、シリーズは累計270万部を突破。最新の第5作「パンどろぼうとほっかほっカー」は昨年12月、全国の書店員が選ぶ「第16回MOE(モエ)絵本屋さん大賞2023」の大賞に選ばれました。
「パンどろぼう」の大型絵本より。伝説の「まずい」も迫力のビッグサイズに(提供写真)
今回のプロジェクトでは、子どもたちの大好きな「パンどろぼう」で本に親しむきっかけをつくると同時に、「高知在住で活躍している絵本作家がいることを知ってほしい」「子どもたちに、高知で活躍することに夢を持ってほしい」と考えています。
■読み聞かせで「大切にされている実感」を
クラウドファンディングの第1目標額は70万円。さらに支援を募り、高知市内の小学校を皮切りに、市内の幼稚園と保育園、高知市外の小学校へと寄贈を広げる計画です。
大崎さんの読書の原体験の一つが、小学校での読み聞かせでした。「図書室のない田舎の小学校で、先生にねだって読んでもらいました。うれしくて、最高の楽しみでした」
プロジェクトでは「社会全体で子どもたちを見守り、育てていく活動」を目指しています
子どもたちに本を贈る運動を、社会全体で子どもたちを見守り、育てていく活動にも高めていきたい。そんな願いを込めて、メンバーたちは奮闘しています。(門田朋三)
「パンどろぼう」の大型絵本を贈るプロジェクトでは、クラウドファンディング「EINEE(えいねぇ)高知」で支援を募っています。4月30日まで。詳しくはこちらから 。