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2024.03.03 08:00

小社会  伝言

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 1989年、ロンドン市街。太鼓を鳴らし、笛を吹く、にぎやかなデモ隊に出くわした。当時の小欄と同じぐらいの若者らが、ある男性の「自由」と「釈放」を求めていた。

 終身刑で南アフリカの刑務所に入っていた男性は翌年、27年ぶりに釈放され、後にノーベル賞を受け、同国大統領になった。人種隔離政策撤廃運動の闘士、ネルソン・マンデラ氏。世界が彼の味方だった。

 北極圏の刑務所で死んだロシアの反体制活動家、ナワリヌイ氏も「いつの日か…」と思っていただろう。かつては極右の民族主義運動もしていたが、「プーチンなきロシアを」と政権批判を強め、人々に支持を広げ、「西側」の期待も集めた。

 映画「ナワリヌイ」(2022年公開)は20年夏に毒殺されかけた彼が実行犯を捜し出すドキュメンタリー。割り出した暗殺チームの顔写真を壁に張り、一人一人に電話する。当局者を装った電話にだまされた4人目の化学者が犯行を語り始め、当のナワリヌイ氏も驚く映像が残る。

 治療先のドイツから帰国すれば投獄されるか殺されるか。それでも彼はモスクワ行きの飛行機に乗る。拘束は到着直後だった。

 殺された場合の人々へのメッセージは?と映画の中で問われる。返答をためらっていた彼はやがてカメラに向かい「諦めるな、だ」。一昨日の葬儀、その「諦めるな」を参列者たちが手拍子して繰り返していた。どれほど長く、過酷な道程なのか。

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