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2024.03.03 08:00

【成果なき政倫審】政治不信は膨らむ一方だ

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 事前の混乱から予想されたとはいえ、衆院の政治倫理審査会は消化不良に終わった。新たな証言など成果もない形ばかりの開催では、政治への不信は膨らむ一方だろう。
 岸田文雄首相(自民党総裁)や派閥幹部の弁明は、衆院予算委員会や記者会見での説明の域を出なかった。政治資金パーティーを巡る裏金事件の反省、説明責任を果たそうとする姿勢が乏しいと言わざるを得ない。偽証罪に問われ得る証人喚問などを含め、国会は真相解明へさらに踏み込むべきだ。
 裏金事件では、東京地検特捜部が安倍派(清和政策研究会)の会計責任者や受領額の大きい議員、二階派(志帥会)と岸田派(宏池会)の元会計責任者ら計10人を立件した。刑事責任の追及は一段落したが、道義的、政治的責任は当然残る。
 政倫審はそうした責任を果たす場だった。裏金づくりはいつ始まったのか。政治活動以外には使われていないのか。国民の疑念にどう答えるかが注目されたが、何一つ解明には至らなかった。
 2日間の審査では「自ら説明責任を果たす」と意気込んだ岸田首相をはじめ、派閥幹部の人ごとのような姿勢、言い訳ばかりが目立った。
 岸田首相は、会長を務めた岸田派の収支報告書不記載を「事務処理上の疎漏」と表現。裏金づくりが始まった経緯や裏金の使途についても党の聞き取り調査をなぞるだけで、明確に説明できなかった。
 派閥幹部も知らぬ存ぜぬで責任逃れに懸命な印象だった。二階派の武田良太事務総長は派閥代表の二階俊博元幹事長の擁護に終始、旧態依然とした派閥体質を見せつけた。
 安倍派の塩谷立座長のほか、西村康稔前経済産業相や松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長の事務総長経験者も同様だった。会計には関与していないとして、立件の対象外だったと強調。派閥の事務局長や事務所秘書ら、各政治団体の会計責任者に責任を押し付けた格好だ。
 安倍派では2022年4月、会長だった安倍晋三元首相が還流をやめるよう事務総長の西村氏に指示。安倍氏の死去後、復活が決まったとみられる。その経緯は焦点の一つだが、幹部4人の弁明通りなら誰も主体的に判断することなく、重大な方針転換がなされたことになる。不可解というほかない。
 あらためて「政治とカネ」問題に対する責任を考える必要があろう。自民党は不祥事のたび、議員個人の説明責任を強調するだけで、問題をなおざりにしてきた。裏金事件でも対象議員の言い分をまとめた聞き取りだけで、実態解明には消極的だ。肩透かしの政倫審はそうした姿勢の表れといえる。政治刷新をうたったところで説得力はない。
 自民党に自浄作用が期待できない以上、国会が強い権限を持って真相に迫るほかあるまい。自民党は自ら、信頼回復への重要な機会を失った。24年度予算案は3月中の成立が確実になったが、裏金事件は当然ながら幕引きとはいかない。

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