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2024.02.26 08:36

事業者の思いを形に 高知商工会議所経営指導員 都築拓也さん(27)香美市―ただ今修業中

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「事業者のよりどころとなるような事業計画を一つでも多くつくっていきたい」と話す都築拓也さん(高知市本町1丁目の高知商工会館)

「事業者のよりどころとなるような事業計画を一つでも多くつくっていきたい」と話す都築拓也さん(高知市本町1丁目の高知商工会館)


 2月下旬の午後、ハウスが広がる高知市介良地区で農家の相談に乗っていた。

 「新しい販売先はどんな事業者ですか?」「売り上げはどれぐらい見込めそうですか?」

 農家の考えに耳を傾けつつ、要所に質問を挟んで課題や展望を探る。金融機関の融資を念頭にした事業計画づくり。顧客の見込み数など、詳細を詰めていくことにした。

 「事業者の思いを徐々に形にしていくのが自分たちの仕事。事業に道筋をつけるお手伝いをしたい」

 ◆

 鏡野中、高知西高を経て、2015年に開設された高知大学地域協働学部の1期生に。座学やフィールドワークを通じて、起業や経営への興味を深めた。県内事業者や各業界の内情を幅広く知りたいと、高知商工会議所を就職先に選んだ。

 当初、企業から申請された環境省の認証制度事務などを担当。さまざまな経営者と接する機会ができた。ただ、ビジネスの実務に関する知識はほぼなし。そんな社会人1年生に、上司は「毎週1冊の本を渡すから読んでみないか」と勧める。気は乗らなかったが断る度胸もなく、読書に時間を割き始めた。

 本県経営者が執筆したビジネス書から、上司が「組織論が詰まっている」と評する司馬遼太郎の小説「燃えよ剣」まで、幅広い分野の本を手渡された。経営指導を主とする部署に異動するまでの2年間、課題図書は100冊を超えた。

 「高校、大学と全く本を読んでなかったけど、どんどん読書の世界に引き込まれた。経営課題をどうやって捉え、どう解決するのか、論理的思考が身についた」。手にした本の数々が「バイブル」になった。

 ◆

 融資や補助金の申請支援、若手社員研修のお世話など、業務は多岐にわたる。企業の業種も、居酒屋にジム、エステ、アパレルなどさまざまだ。

 中でも経営指導員の腕の見せどころといえるのが、事業計画書の作成支援。どんな商品をいくらで売り出し、誰をターゲットとするのか。競合相手はいるのか。事業者と綿密に話し合いつつ、「事業者が気づけていないことはないか」と頭を巡らせる。

 新たに車のタイヤ修理業を始めたいという相談に乗ったときは、需要が全く分からず、つてのある県内のディーラーに片っ端から電話して市場調査を行うよう助言。その新事業は無事に国の補助金を得てスタート。「役立てて、うれしかった」と相好を崩す。

 一方では苦い経験も。小売業者から求められ、補助金申請の書類作成を進めていたところ、締め切り直前に補助対象でないことが判明した。

 別の補助事業を紹介することで事なきを得たものの、一歩間違えば、事業者が当て込んでいた何百万円の支援がなくなっていた。「事務局に確認すればミスは防げた。石橋をたたきながら業務に当たらないと大きな迷惑をかける」と表情を引き締める。

好きな言葉

好きな言葉

 好きな言葉は「伝える」。相談者は海千山千の経営者ばかり。だからこそ、財務状況や原価率、収支などの数字を根拠に、伝えるべきことを伝えたい。

 「事業者の要望に応じることだけが仕事じゃない。時には『今は投資のタイミングではない』と指摘しないといけない。伝える力をもっと身に付け、事業者に寄り添っていきたい」

 写真・飯野浩和
 文 ・安岡仁司

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