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2024.02.21 08:00

小社会 小澤征爾さんの「7番」

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 小澤征爾さんの訃報を知った日の夜、ベートーベン交響曲第7番の勇壮な調べに身を沈めた。ヘッドホンで耳を覆い、寝床に潜り込む。音源はインターネットの配信サービスだ。小澤さんの85歳を記念してリリースされたライブ録音を見つけていた。

 サイトウ・キネン・オーケストラを指揮した演奏は、その年齢など微塵(みじん)も感じさせない胸高まるものだった。 小澤さんが高知市の県民文化ホールで「7番」を指揮したのは2003年のことだ。小澤さん本人に話を聞くことはかなわなかったが、本番前のリハーサルから間近にいることができた。

 新日本フィルの奏者たちの前に、歌舞伎役者のようなボリュームある白髪をなびかせる小澤さんが現れる。空気が一変した。その存在によって「もうこれは音楽に専念するしかない」という覚悟のようなものが広がっていく。

 そして演奏本番、その覚悟は奏者ばかりでなく聴衆にも及ぶ。7番という楽曲が持つリズミカルで勇壮なメロディー、織りなす甘美なハーモニーという豊かな音楽世界が立ち上がる。指揮台に立つ小澤さんの存在と振る舞いによって。

 あれから20年が過ぎた。音楽の聴き方も激変した。CDを買い求めなくてもインターネットで膨大な音楽が配信される。音質もCDを上回ってきた。寝床で聴いた小澤さんの7番も実に素晴らしい音質だったが、あの存在と振る舞いまでは伝えがたい。

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