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2024.02.01 15:13

【インタビュー】小芝風花「役と気持ちがリンクした表情に注目を」 映画「レディ加賀」ドラマ「大奥」主演作続く 

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 小芝風花。「元々、疲れを感じにくいタイプ。だからこそ無理をしすぎないように、自分でも気を付けたい」

※後段に一問一答があります。



 小芝風花の勢いが止まらない。昨年は3クール連続でドラマの主演やヒロインを務め、気弱な会社員から毒舌のラジオDJまで、幅広い役柄を演じた。年明けからはドラマ「大奥」(フジテレビ系)で公家から大奥入りした主人公・五十宮倫子を熱演。9日には主演映画「レディ加賀」も公開される。「お芝居が好き。台本に描かれていない感情の部分をどれだけ広げられるかを大事にしたい」と仕事への向き合い方を語る。


 「レディ加賀」は、タップダンサーになる夢を諦め、実家の温泉宿に戻った主人公・由香が、新米女将として奮闘する物語。「女将修行を通じて、諦めない心を学んでいく由香の成長を見守ってください」


 見どころは由香が女将修行の仲間と共に町おこしイベントに出演する場面だ。小芝らが「数カ月かけて練習した」という着物姿でのタップダンスを披露している。「みんなで『ここは絶対、格好良く決めたいね』と話していた。やりきった時は達成感があった。由香の気持ちと私自身の気持ちがリンクしていい表情になったと思うので、注目してほしい」と晴れやかな笑顔を見せる。


 公開を前に能登半島地震が発生、県内各地で被害が出た。「この映画で、石川県がまた元気になる力添えをできたら」と小芝。配給収入の5%を県に寄付することも決まった。「石川のいい所がたくさん出てくるので、映画を見た後、行ける所にはぜひ観光に訪れてほしいです」と話した。


 「大奥」は2003年から続く人気シリーズの続編に当たる。菅野美穂、松下由樹ら「名だたる先輩たちと並ぶうれしさもあり、怖さも感じている」。自身が演じる倫子は、さまざまな思惑が渦巻く大奥の中で「みんなが幸せに暮らせるように願い続ける、心のきれいな女性です」と印象を語った。


 豪華な衣装やかつらは「見ている分にはすてきだけど、着るのは大変」。体の動きも大幅に制限される中で「どうやったら倫子の細やかな感情を表現できるか。考えることがすごく多いです」と試行錯誤の日々を明かした。



※ここからは映画・ドラマの舞台裏や、小芝さんの私生活に迫るインタビューをお届けします。



(1)「9カ月前から」タップの練習



 記者 「レディ加賀」は小芝さん演じる由香がタップダンサーになる夢を諦め、加賀で温泉宿を営む実家に戻るところから始まります。どんな印象を持ちましたか?



 小芝 由香はやりたいことには真っすぐなんだけど、壁が出てくるとすぐ折れちゃう。そういう自分に甘いところをお母さん(檀れい)には見透かされていて「女将なんて無理よ」って言われてしまうんです。



 記者 そんな由香が、女将修行を始めたことで少しずつ変わっていくんですね。



 小芝 周りにいるのは本気で女将になりたい人たち。その姿を見て、一緒に女将という仕事について学んでいくことで、折れない心を身に付けていって、やがて加賀を盛り上げるためにイベントを立ち上げる。それもトラブル続きなんだけど、女将修行で習った「諦めない心」を胸に乗り越えていく。由香の成長物語になっています。



 記者 劇中では着物姿でのタップダンスも披露されました。どれくらい練習を?



 小芝 9カ月くらい前からですね。私はプロを目指していた役なので、他の皆さんよりもかなり前から習っていました。基本は週1回のレッスンなんですけど、撮影に入ると2カ月行けなくなることもあったので、ベニヤ板を買って毎日、家で練習してました。



 記者 最初から音は出るんですか?



 小芝 最初はタン、タン、ってゆっくり鳴らすんです。そこからだんだんスピードが速くできるようになったな、とか、きれいに音が出るようになったな、とか、音を聞いて自分の変化が分かるので、練習していてすごく楽しかったです。



 記者 小芝さんはフィギュアスケートをされていたので、その経験が生きたのでは?



 小芝 うーん。フィギュアスケートって上に伸びる競技なんです。でもタップは逆で、下に押し流すのが大事。私はつい癖で意識が上に行っちゃって、足が床をかすってきれいに音が出ない、みたいなのが結構ありました。



 (2)映画で石川県をまた元気に



 記者 撮影の大半が石川県でのロケでした。みなさん同じ所に宿泊を?



 小芝 そうです。温泉大浴場のある宿で、撮影が終わると毎日みんなで一緒にお風呂に入って、その日あったことを1時間、2時間、露天風呂で話すのが習慣になってて。だから女性陣はみんな「裸の付き合い」ですね。サウナの入り方も教えてもらいました。



 記者 ととのいました?



 小芝 これが「ととのう」なのかな? っていうのはありました。ぐるぐるする感じ。



 記者 印象に残ったシーンは。



 小芝 イベントでタップダンスを披露するシーンです。みんな初心者からこの作品のためにタップを練習してきたので「ここだけは絶対、格好良く決めたいね」って話してて。曲によって出演する人としない人がいるんですけど、出てない人もそばで見ててくれたり、動画撮って「最高!」みたいに合図を送ってくれたり。終わった時はすごく達成感がありました。由香の気持ちと私自身の気持ちがリンクしていい表情になったと思うので、注目してほしいです。



 記者 何日くらいで撮ったんですか?



 小芝 4~5日くらいはかかってたと思います。イベントなのでお客さんがいるんですけど、それが地元の石川県のエキストラの方々で、毎日たくさんの方が参加してくださったんです。屋外イベントだから昼間はすごく暑かったのに、皆さんすごく楽しそうで。



 記者 この作品を盛り上げたい、という地元の方の思いを感じましたか。



 小芝 そうですね。エキストラの方だけじゃなくて、皆さんが本当に協力的で、撮影中すごく親切にしていただいて、心から感謝しています。



 記者 石川県全体がこの映画と一緒に盛り上がろうとしていた矢先に能登半島地震が発生し、特に能登地方で大きな被害が出てしまいました。加賀地方は比較的被害が少ないものの、観光客が激減して打撃を受けていると聞きます。



 小芝 私にとっても思い出深い場所の一つになった石川県で、お世話になった方々が大変な状況にあることは、すごく心が苦しいです。一日も早い復旧復興を心からお祈りしています。私自身にできることは少ないんですけど…この作品で石川県がまた元気になる力添えを少しでもできたらなと思います。被災地の皆さんは、もしかしたらまだ映画を見に行く余裕はないかもしれないんですけど、少しでも大変な気持ちが和らぐ時間をお届けできたら。



 記者 配給収益の5%を義援金として石川県に寄付することも決まりました。



 小芝 石川県のすてきな場所がたくさん出てくるので、特に県外の方は映画を見てそういう場所に興味を持ったら、行ける場所にはぜひ行っていただきたいです。私自身も、時間ができたらまたプライベートで訪れたいです。



 (3)京ことばで公家らしさを



 記者 放送中のドラマ「大奥」(フジテレビ系)では、公家出身で10代将軍徳川家治(亀梨和也)の正室となった五十宮倫子を演じています。現代とは全く異なる環境を生きた女性の心情をどうとらえていますか。



 小芝 倫子はものすごく真っすぐでピュア。色で例えたら「白!」って感じです。その真っすぐさが、今まで大奥の中でいろんな思いをして暮らしてきた人には白すぎて、わずらわしく感じられてしまうのかも。思いっきり敵意を見せる人、倫子の優しさに付け入ろうとする人、いろんな思惑が渦巻いてドロドロしていくんですけど。そんな中でも倫子はみんなが幸せに暮らせるようにって思っている。すごく心のきれいな女性ですね。



 記者 時代劇の出演経験はお持ちですが、公家のお姫様となると、所作や言葉遣いに気を使うことも多いのでしょうか。



 小芝 公家だけど10歳ぐらいから江戸にいるので、全編京ことばってわけではなくて。一緒に京から来たお品(西野七瀬)と2人で心が緩んだ時、感情が高ぶった時にちょっと京ことばが出る感じにしています。最初の台本では京ことばが一切なかったんですけど、大奥で公家のお姫様が御台になるのは初めてなので、少しでも公家らしさを出したくて、監督に相談して入れてもらうことになりました。



 記者 小芝さんは大阪出身ですから、同じ関西の言葉にはなじみがあるのでは?



 記者 むしろ苦戦してますね。大阪弁って気持ちが乗れば乗るほど早口になるんですよ。でも京の人はゆっくり話す方が強い意思表示になる。「京ことばが出る時は感情が乗っているとき」って設定にしてしまったので、大阪人の癖としては早口になりがちなところを、ぐっと我慢しています。



 (4)人気シリーズ引き継ぐ「うれしさと怖さ」



 記者 豪華な衣装も見どころの一つですが、実際に着てみていかがですか。



 小芝 とにかく大変! 首も腰も肩も全部ガチガチです。長い裾を引きずって歩くので、動くたびに美しくさばかないといけないし。それも「やってます」って感じじゃなくて、あくまで日常の動作として自然に見せないと。大事なのはその時の倫子の感情をしっかり伝えることなので。



 記者 想像するだけで頭がパンクしそうです。


 


 小芝 本当に考えなきゃいけないことが多くて。現代劇なら、例えば演技の中で男性に触りたいという感情が湧いてきたら、アドリブで触ることもできる。でもこの時代だと、自分の感情としては寄り添いたいんだけど女性から触って大丈夫ですかね? って確認から始めなきゃいけない。その時代の常識とかルールと、自分の中から湧いてきたものの擦り合わせが難しいです。



 記者 2003年から続く人気シリーズを引き継ぐ重圧は感じていますか。



 小芝 名だたる先輩たちと並ぶうれしさもあり、怖さもありって感じです。どうしても比べられるだろうし、昔の方が好きだったって方も絶対いらっしゃる。ただ、今回は「愛」をテーマに新しい「大奥」を作りたい、という気持ちでスタッフ、キャスト一同頑張っています。だから私もなるべく気にしすぎないように、目の前の役に集中しようと思っています。



(5)長ぜりふで「脳みそが覚醒」



 記者 昨年はドラマにバラエティーに大活躍でした。充実感はありましたか。



 小芝 めちゃくちゃありました。いろんな役をやりたいっていうのがずっとあって、去年は今までやってこなかったような役に挑戦させていただいた年だったので、楽しかったです。



 記者 ご自身で「一皮むけたんじゃないか」と感じた役は?



 小芝 ドラマ「波よ聞いてくれ」(テレビ朝日系)の(主人公でラジオDJの)ミナレですね。今までは割と良い子というか、けなげな感じの役が多かったんですけど、ミナレはとにかく破天荒で口も悪い。マイクに向かって怒鳴り散らすような役を自分にいただけるなんて思ってなかったので、最初は怖かったんですけど、ふた開けたらめっちゃ楽しくて。



 記者 放送時は小芝さんの膨大なせりふ量が話題となりました。あれ、どうやって覚えたんですか?



 小芝 脚本家さんの言葉のチョイスが素晴らしくて、ちゃんと感情が通ってるから、どんな長ぜりふでもするっと入ってくるんですよ。後はやってるうちに脳みそも覚醒してくるみたいで、違うシーンの撮影しながら次の回のせりふを丸々覚えた日があって。撮っているのも12ページぐらいの長ぜりふだったんですけど、カメラのセッティングチェンジしてる間に気付いたら入ってたんです。「あ、やばい。私いま無敵かもしれない」って。



 記者 成果が「せりふ量」という形で目に見えるから、どんどん気分が上がっていったんでしょうか。



 小芝 本当に。あれ以来、どんな長ぜりふが来ても「ミナレより少ないし」って思えるようになりました(笑)



(6) 47都道府県を巡りたい!



 記者 忙しい中でモチベーションを維持するために心がけていることは。



 小芝 お風呂の間は仕事のことを考えないことにして、ユーチューブ見たり、ぼーっとしたり、自分のための時間にしています。後は「大奥」が終わったら少しお休みを頂くので、旅行の計画を立てるのが楽しみ! 今、47都道府県を巡りたいっていう目標があって。


 


 記者 お仕事以外で?



 小芝 そうです。自分の中で決め事があって「地酒を飲む」とか「郷土料理食べる」とか「写ルンです(レンズ付きフィルム)で写真を撮る」とか、条件を全部達成したら地図のその県に色を塗れるってルールで回っていこうと。今年から始めるので、まだ真っ白なんですけど。



 記者 始めようと思ったきっかけは?



 小芝 現場で共演者の方と話してて、どこ行くんだったらこれがおいしいよとか、この美術館がお薦めとか、そういうのがさらっと出てくるのがすごくすてきだなと思って。私は日本にいるのに全然知らなくて、せっかくなら全国ちゃんと回りたいなと思いました。



 記者 お仕事での今後の目標を教えてください。



 小芝 今まで通り「台本に描かれてない感情をどれだけ広げられるか」をちゃんと極めながら、これからは身も心も健康でいることを心がけたいです。10代前半とは変わってきてるっていうのが実感としてあるので(笑)。やっぱり体が資本なので、お仕事に全力で打ち込むためにも、体調管理、メンテナンスをしっかりしていきたいです。


(取材・文=共同通信 高田麻美、撮影=佐藤まりえ)

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