2024.01.28 08:00
【日本が月面着陸】宇宙探査の可能性広げた
日本の月面着陸は初めてで、旧ソ連、米国、中国、インドに続く5カ国目となる。ただ、特筆すべきなのは順位より成功の中身だろう。
月面の目標地点から約55メートルしか離れていない場所に着地。「ピンポイント着陸」と呼ばれる誤差100メートル以内の世界でも前例のない高精度の着陸に成功した。
この成功は、惑星への着陸技術が「降りられる場所に降りる」から「降りたい場所に降りる」に飛躍的に高まったことを意味する。宇宙探査の可能性が大きく広がる成果といえるだろう。
月は重力がある上に大気がほとんどないため、探査機を損傷なくゆっくりと着陸させるのが難しい。これまでに成功している国も精度より安全に降りることを優先。目標地点と実際の着陸地点には数キロ~十数キロの誤差があった。
JAXAによると、スリムは高度50メートル付近までは誤差10メートル以内で「非常に良好」に降下。その後、月面に障害物を検知して回避したことや、エンジントラブルもあって誤差が広がった。それでも100メートルより大幅に少ない誤差だった。
日本も参加する米国主導の月探査計画「アルテミス計画」では、将来的に月面への有人着陸や月面基地の建設を目指す。月を中継拠点にした火星探査も視野に入れている。
そのため注目されているのが、月の極域にあるとみられている水の存在だ。水は電気分解で水素と酸素にすれば燃料として利用できる。
燃料を現地調達できる意義は大きい。水の探査が始まれば、ピンポイント着陸は狙った場所に降りて調査する効率のよい方法として威力を発揮しそうだ。
スリムは着地前に自律走行型の小型ロボット2機も分離。このうち、玩具メーカーのタカラトミーなどが開発した超小型変形ロボット「SORA―Q(ソラキュー)」は月面上のスリムの様子を撮影することにも成功した。
こうした超小型ロボット活用の有用性を日本が実証できたのも、今後の惑星探査につながる技術だ。
ただエンジントラブルもあって、スリム本体の月面での着地姿勢は予定通りにならなかった。太陽電池パネルの向きも反対側になり、発電ができなくなった。トラブル原因をしっかりと究明し、今後に生かしてほしい。
一方で、太陽の向きが変われば、発電できるようになり、月面での岩石の撮影などを再開できる可能性があるという。月は誕生過程を含め謎が多い。探査再開が期待される。
アルテミス計画では米国の宇宙船で日本人宇宙飛行士も月面着陸を目指すことがほぼ確実な情勢になっている。探査機の技術とともに、日本の宇宙探査への貢献を一層高めていきたい。