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2024.01.15 08:00

【台湾総統決まる】有事回避へ対話の道を

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 台湾の総統選は与党、民主進歩党(民進党)候補の頼清徳副総統が勝利した。台湾統一を掲げて威圧的な行動をとる中国に対し、台湾の人々は、米国との関係強化で対抗してきた蔡英文総統の路線を踏襲することを選択した。
 三つどもえの戦いの中で、中国の権威主義と最も距離を置く頼氏が勝ち上がったことは、民主主義や人権、自由などの価値観が確立された台湾の現状を改めて浮き彫りにしたと言える。中国をはじめ各国が、その民主的選択を重く受け止める必要がある。
 ただし、選挙で示された民意は単純ではない。
 頼氏の得票率は全体の約4割にとどまり、前回の蔡氏のそれに遠く及ばなかった。また、同時実施した立法委員(国会議員)選挙で、民進党は過半数割れした。野党の協力がなければ、安定した議会運営が望めない状況だ。
 2期8年の民進党の政権運営に対し、経済政策や汚職問題などで有権者の不満が募っていたとされる。昨年の世論調査では、政権交代を求める割合が6割に上った。結果的に破綻したが、国民党、台湾民衆党の野党候補の一本化が実現していたら、頼氏は敗れた可能性が高い。
 1996年に総統の直接選挙が実現して以降、同一政党が3期連続で政権を担うのは初めてになるが、頼氏の政権基盤は不安定だと言わざるを得ない。
 その中で、圧力を一層強めることも予想される中国と向き合うことになる。台湾の有権者の多くは、中台が平和的に共存する現状維持を求めている。頼氏は「対抗でなく、対話によって平和共存の実現を」とも訴えた。有事を回避するための指導力、行動力が強く求められる。
 民進党を独立派とみなして敵視する中国は、軍事威嚇や経済圧力で選挙情勢をけん制してきた。民進党が不利になる情報戦を仕掛けるなど、選挙介入疑惑も持たれている。民主主義の妨害が逆に台湾有権者の反発を招いたと気づくべきだ。
 中国側は選挙結果に対しては、「一つの中国」の原則を改めて主張し、「国家統一は正義だ」と反発した。軍事、経済分野で圧力を強めることが懸念される。
 ただ、対中融和路線をとる最大野党、国民党の侯友宜氏、第2野党の民衆党の柯文哲氏ともに、中台関係は「一国二制度による統一」ではなく、「現状維持」を主張した。台湾側の対中姿勢は、もはや揺るぎないものになっている。
 中国は経済問題など内政で不安も抱え、米中関係を改善する必要性も指摘されている。現実を見据え、頼政権との対話の道を探る必要があるのではないか。
 台湾と友好関係にある米国、日本はともに、選挙結果いかんにかかわらず台湾海峡の平和と安定を求め、維持する立場だ。米大統領選の行方も絡み、状況は予断を許さない。微妙な中台関係を踏まえながら有事を回避する外交努力が求められる。

高知のニュース 社説

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