2024.01.07 08:00
小社会 被災地とよさこい
能登でよさこいが広まったのは、ひとえにこの人の存在があったから。温泉街で続いていた祭りが行き詰まり、元気がなくなったなあと思っていた頃、よさこいを知る。まちづくり。仲間づくり。これをやろう。
こんなの無理だ、と周囲が首を振る中、田尻さんは諦めず、あちこちを回って自ら踊って見せた。な、な、できるやろ。その情熱が周囲を動かし、温泉街でよさこいが始まったのが1997年。やがて能登半島各地によさこいが芽吹いた。
電話で話したのは地震4日目。電気は戻ったが、依然断水。「わしはじっとしとるだけやけど、若いもんが炊き出しやら何やら、やってくれとるでー」
能登よさこい祭り連絡協議会の会長、小崎武雄さん(40)は避難所のテントで寝起きしながら住民を支える。「消防団もみんな、よさこいのメンバーなんです」。全国のよさこい仲間から励ましの声が届く。交通規制もある中、遠く県外から物資を届けに来る人も。前会長の赤坂明さん(62)は「人のつながり。もう、感謝ですよ。高知の皆さんにもよろしくお伝えください」。
祭りのためだけではない。凍(い)てつく寒さ、惨状が広がる被災地にも、よさこいが紡いだものがある。