2024.01.01 08:00
小社会 辰年の元日
竜は十二支でただ一つ空想上の動物になる。なぜ選ばれたのか。「日本人にとって干支(えと)とは何か」(武光誠著)には、古代中国の知識人はこう信じていたとある。「きわめてまれに姿を現す、竜という尊い生き物がいる」。
慣用句やことわざの上でも、竜は身近な存在として溶け込んでいる。例えば、「逆鱗(げきりん)に触れる」。竜は見かけによらず優しい動物で慣れれば乗ることもできる。ところが、喉の下に1枚あるうろこに触れると人間を突き殺してしまう。転じて、目上の人の怒りを表す。
2024年、辰(竜=たつ)年が明けた。政界では、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が年をまたいだ。国民の政治不信は頂点に達したように見える。物価高に加え、増税の影にも憤る主権者の逆鱗に触れたのか。
岸田首相は、「国民の信頼回復へ火の玉となって党の先頭に立つ」と宣言した。年明けの通常国会に向け、世論を納得させる政治改革案を打ち出せるかどうか。まだ具体論は見えてこないが、ゆめゆめ「竜頭蛇尾」や「画竜天睛を欠く」ような改革にしてはなるまい。
正月から愉快ではない話になった。何かと心配事が募っている社会も、ことしは昇竜の辰年になりますように。