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2023.12.15 05:00

【裏金問題で人事】具体論欠く改革への道

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 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑を受け、岸田文雄首相は安倍派(清和政策研究会)の閣僚4人を交代させる事実上の更迭人事を行った。だが、顔触れを替えても疑惑が払拭されるわけではない。場当たり的な対応では、政治不信は消えるどころか深まるだけだ。
 いま問われているのは、事実を明らかにし、「政治とカネ」問題を生む土壌に抜本的なメスを入れることだ。首相は信頼回復と政治改革への決意を力説するが、具体論に欠ける。行動で示す必要がある。
 裏金疑惑を受け、岸田首相は、松野博一官房長官の後任に林芳正前外相を充てるなどの人事を行った。安倍派の副大臣・政務官計6人も交代させた。党側では萩生田光一政調会長らが辞表を提出した。
 「火の玉になる」。裏金疑惑の批判が強まる中、首相は13日の国会閉会後の会見で「国民の信頼なくして政治の安定はない」「党の体質を一新すべく先頭に立つ」と訴えた。
 だが疑惑解明に向けては、当事者の調査や検察の事実認定を待つような認識を示し、踏み込まなかった。これでは、「捜査中」などの理由で説明を避けてきた安倍派幹部らの対応を容認したようなものだ。
 抜け道の多さが指摘される政治資金規正法の改正に対しても「議論になることもありうる」とトーンは低く、派閥の在り方では「課題、原因を確認した上でさまざまな声に応えていく」と述べるにとどまった。
 「火の玉」が説得力を伴わない。自身の安定的な政権運営のために、まだ主要派閥に配慮しているのだろうか。威勢が良いのは言葉だけだと言われても仕方あるまい。
 疑惑は時間がたつほどに、新しい展開も見せる。パーティー券の販売収入を原資に安倍派の議員が2022年までの5年間でつくった疑いのある裏金は、当初報道された1億円超から5億円に膨らんだ。
 安倍派の宮沢博行氏は、裏金化は派閥の指示で組織的に行われていたと証言。疑惑浮上後に派閥幹部から口止めされたことも明らかにした。事実なら悪質さが際立つ。
 疑いを持たれているのは安倍派だけではない。二階派(志帥会)、さらに首相が会長を務めていた岸田派(宏池会)も過少記載が指摘されている。首相自身が疑惑の当事者になりかねない。今回の人事の後で、新しい裏金疑惑が浮上する可能性も否定できない。
 政策課題に対する取り組みは停滞している。首相は今回の人事を「国政の遅延回避のため」とするが、もはや人事で事態が収拾するような状況ではあるまい。東京地検特捜部が派閥の強制捜査に乗り出せば、さらなる混乱は必至だ。
 政治課題の停滞は国民生活に影響してくる。岸田首相の言う通り「国民の信頼を回復させ、政治を安定させる」必要がある。そのために首相ができることは、踏み込んだ指導力を発揮すること以外にないのではないか。それができないのなら進退問題に発展するのは当然だ。

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