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2023.12.09 08:00

【自民の裏金疑惑】場当たり対応が傷深める

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 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑は、事実であれば、資金の流れを透明化する政治資金規正法の趣旨に反する重大な問題だ。東京地検特捜部が規正法違反の疑いで捜査しているが、自民側に自ら事実関係を調べ、説明責任を果たそうとする姿勢は依然、乏しい。
 このままでは不信感は膨らむ一方だ。党総裁である岸田文雄首相は指導力を発揮し、全容解明に努める責任がある。派閥幹部らも対応を改めるべきだ。同時に、抜け道が多いとされる規正法を見直す契機にしなければならない。
 裏金疑惑は、5派閥がパーティー収入の過少報告を刑事告発されたのを機に表面化した。最大派閥の安倍派(清和政策研究会)はパーティー券の販売ノルマを超えて議員側が売った分を、収支報告書に記載せず議員側にキックバック(還流)していたとされる。二階派(志帥会)もノルマ超過分を還流させ、派閥収入として記載していなかったようだ。
 安倍派の未記載額は2018年からの5年間で1億円以上とみられ、松野博一官房長官らも1千万円を超える還流を受けていた疑いが取り沙汰される。岸田政権の土台を揺るがしかねない事態である。
 これらは事務的ミスで済ませられるような行為ではない。政官業の癒着によるスキャンダルの続発を受けて1995年に導入された政党交付金は、政治にまつわる金の流れの一層の透明化を目指して導入された経緯がある。透明化を軽んじれば国民への裏切りになる。不透明な収支がある以上、金銭で政治がゆがめられた懸念も否定できない。
 にもかかわらず、何度説明を求められても、松野氏を含めた安倍派幹部らは「政府の立場」「捜査中」などを理由に正面から答えない。紋切り型の答弁を繰り返す対応は「逃げ」の印象を免れず、やましい事実があると思われても仕方ない。
 岸田首相も危機感を欠いた。疑惑発覚当初は対応を各派閥に任せ、党主体での対応に切り替えたのは問題視する声が高まってからだ。ただ、派閥パーティー開催の当面自粛を指示したものの、事実解明への具体的な指示はいまだにない。
 さらに、自らが会長を務めてきた岸田派(宏池会)を唐突に離脱した。派閥不信の世論を受けた判断のようだが、これまで批判を受けながらも派閥会長にこだわってきただけに、場当たり的との批判が出る。
 党内で長い期間、裏金づくりが当然のように行われていた可能性がある。疑惑の重大さを踏まえれば、中途半端な対応と言わざるを得ない。13日の国会閉会後には東京地検の捜査も本格化するとみられる。対応が後手に回るほど政権への打撃が大きくなると考えるべきだ。
 改めて浮き彫りになるのは政治資金規正法の緩さだ。パーティーを通じた集金が、禁じられた企業・団体献金の抜け道になっているのが実情だろう。多額の費用がかかるとされる現在の政治の在り方を含めて、踏み込んだ見直しが求められる。

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