2024年 05月02日(木)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.12.07 08:00

【被害者救済法案】実効性に課題が残る

SHARE

 高額献金被害の訴えが相次ぐ世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向け、解散命令前の財産監視を強める特例法案が衆院を通過した。13日が会期末の今国会で成立することが確実となった。当事者らが強く求めていた包括的な財産保全措置は盛り込まれなかった。
 救済が急がれる状況とはいえ、被害補償の実現までに教団資産が海外に流出する恐れは否めず、被害者に不安を残した格好だ。救済の実効性確保が課題となる。
 救済を巡る最大の焦点は、教団資産の保全措置の是非だった。教団は先月開いた記者会見で、保全は不要だと主張。解散命令裁判が確定するまでは資産の海外移転は考えていないとした。
 ただ、教団側は総資産額など詳細を明らかにしていない。信者が現金を持って世界教団本部のある韓国に渡航し、直接献金している実態もある。被害の補償を全うするには、その原資を確保することが不可欠だ。支援弁護士などは包括的な保全策を求めていた。
 国会の対応は割れた。立憲民主党と日本維新の会は教団による資産の隠匿や散逸を防ぐ必要があるとして法案に保全措置を盛り込んだ。
 一方、自民、公明、国民民主の3党は、包括的保全は信教の自由に抵触する恐れがあるとして反対。法令違反などで解散命令を請求された宗教法人が不動産を処分する際、所轄する国や都道府県への通知を義務付けるなど、財産の監視に重きを置いた法案を提出していた。
 修正協議でも両者の溝は埋まらず、自公国が特例法案の付則で施行後3年をめどに「財産保全の在り方を含めて検討する」と修正したことで、立維が賛成に回った。会期末が迫る中、時間切れで議論が生煮えに終わった印象は拭えない。
 例えば、全国統一教会被害対策弁護団は、保全範囲を海外送金や不動産処分に限定すれば、信教の自由の問題は解消できるとの見解だった。検討の余地はなかったのか。また、衆院では被害者や支援弁護士らを参考人として呼ばないまま審議を終えている。より被害者本位で救済策の実効性を高めるための熟議が不足していたのではないか。
 個別に民事保全手続きなどが必要となる内容に、包括的な救済を期待していた被害者には落胆の声も聞かれた。中には自民党と教団のつながりをいぶかる向きもあるようだ。岸田文雄首相が自民党政調会長だった2019年に、教団関係者と面会していたとの報道も重なった。
 岸田政権は、安倍晋三元首相の銃撃事件で自民党と教団の関係が問題視されて以降も、安倍氏との関係や教団の影響、地方議員との関わりといった実態を十分に調査せず、国民への説明をうやむやにしてきた。そうした不誠実な対応が被害者の不信感を高めているといってよい。
 弁護団は、被害額が潜在的なものを含め1千億円程度に上る可能性があるとする。着実な救済が進まなければ政治への不信は一層高まろう。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月